第9章 あっと言う間のバケーション(その25)
「分かる気はするが・・・。それが、一番だとはなぁ~・・・。」
祖父はまだ笑っている。
「そ、それって、おかしい?」
哲司は不安になる。何か間違ったことを言ったような気にもなってくる。
「い、いや、おかしくはない。
だけれども、それだけ哲司の学校生活が充実してるってことだろうな。」
「ん? ジュウジツ?」
「つまりは、学校生活そのものは楽しめてるってことだ。」
「えっ! そ、そうなのかなぁ~?」
哲司は、そう意識したことはない。
「爺ちゃんは、哲司が“勉強すること”って言うのかと思ったからな。
で、さらに言えば、“学校に行くこと”って言うかもって・・・。」
「ああ・・・、勉強・・・、そ、それもあるかも・・・。」
哲司は、そうフォローする。
範囲を広げて、そう言えば良かったとも思う。
ただし、祖父が最後に言った「学校に行きなくない」とは思っていなかった。
基本的にはだ。
「だから、宿題って聞いて、それこそ意外だったんだ。」
「そ、そうなの?」
「ああ・・・、そんなもの、簡単なことだろ? 何も、嫌がる必要はない。」
「そ、そうなのかなぁ・・・。」
哲司は、少し声が小さくなる。
(爺ちゃんは当事者じゃあないからそう思うんだ。)
哲司は、内心、そう思った。
「やらされる僕の身にもなってよ」と言いたくなる。
「宿題ってのは、読んで字の如しで、家に持ち帰ってやる勉強だ。」
「う、うん・・・。」
「と言うことはだ、自分の好きな時間に、自分の好きなように勉強が出来るってことだ。」
「・・・・・・。」
哲司は、「そんなことを言われても・・・」と思っている。
「つまりは、自由に出来る勉強だってことだ。」
「じ、自由にって・・・、そう言っても、やらなきゃいけないし・・・。」
「それはそうだ。やらなくても良い勉強なんて、小学校や中学校に通っている間はないんだ。」
「・・・・・・。」
哲司は、「ほら来た!」と思った。
やっぱり、爺ちゃんも「勉強しろ」って言うんだと・・・。
「その自由にってことが大切なんだ。」
「ん?」
哲司は、祖父が言う「自由」ってのが分からなかった。
「哲司は、カップラーメンを良く食べるらしいな?」
祖父は、何を思ったのか、突然にそんな話を持ち出してくる。
(つづく)