第9章 あっと言う間のバケーション(その20)
「助け合う・・・。」
哲司は、何度もその言葉を聞いたように思う。
「ああ・・・、最初に言ったろ? 人間は決してひとりじゃ生きられないんだって・・・。
常に誰かの助けがあって、毎日を暮らしているんだって・・・。」
祖父は、「思い出せ!」とでも言うような顔をする。
「じ、爺ちゃんでも?」
哲司は、祖父がこの家でひとりで生活をしていることを指して言う。
誰の世話にもなってない。
「ああ、もちろんだ。」
祖父は、当然と言う顔をする。
「だ、だって・・・。」
哲司は、「ひとりで住んでる・・・」という言葉を飲み込む。
どうしてか、その言葉を使いたくはなかった。
「あははは・・・、哲司、それは間違いだ。」
祖父は、哲司が飲み込んだ言葉を分かっているようだった。
そして、それを否定してくる。
「だったらな、考えてもみろ。
ま、今日は竈でご飯を炊いたが、いつもは電気炊飯器だ。
それが使えるのは、この家に電気を通してもらっているからだ。
そうだろ?
どこかのコマーシャルじゃあないが、冷蔵庫や洗濯機にしても、電気がなけりゃあただの箱だ。何の役にも立ちゃあしない。」
「そ、それはそうだけれど・・・。」
「その電気も、爺ちゃんがここで作れる訳は無いだろ?
遠くの発電所で電気を作って、それを長い長い電線を張ることでこの家にも電気を運んできてくれているんだ。
もちろん、それをやっているのは電力会社なんだが、そこには何千人と言う人が働いている。
そうしたひとりとひりの力が合わさって、いつでも電気が使えるようにしてくれているんだ。
つまりは、そうした人達の助けが無かったら、いくら爺ちゃんが頑張ってみたって、ここでテレビを見たり、洗濯機を回したりは出来んのだからな。」
「な、なるほど・・・。」
「だから、人間は、感謝をする気持を忘れちゃあいかんのだ。
で、その第1歩が、ご先祖様への感謝なんだ。」
「だ、だからなの? ご飯のお供えをするって・・・。」
「おお、よく分かったな。偉い偉い。
そうなんだな、だから、哲司にそれをやってもらおうって思ったんだ・・・。」
「ど、どうして、ご先祖様に感謝しなくっちゃいけないの?」
哲司は、肝心な部分を問う。
何となく分かったようなつもりではいたが、改めて聞きたいと思う。
「哲司が、今、ここに生きてられるのは、ご先祖様があってのことだろ?」
祖父は、にっこり笑いながら答えてくる。
(つづく)