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第9章 あっと言う間のバケーション(その17)

「・・・・・・。」

哲司は、必死の思いで祖父が言ったことを頭の中で整理する。


もともとが乱雑な頭の中だ。

頭の中には、それこそ数え切れないほどの引き出しがあると誰かが言ってた。

哲司は、「へぇ~、そうなのか」と思っただけだったが、こうして祖父とじっくり話していると、確かにその引き出しってのは沢山あるように思えてくる。

だが、哲司には肝心のその引き出しの整理がままならない。


家の自分の机だけでもそうだ。

たかが4つの引き出しがあるだけなのだが、一旦入れると、次に出すときに、「あれ? どこに仕舞ってたっけ?」となる。

それが日常茶飯事なのだ。


「仕舞うところを決めないからよ。だから、どこにあるかが分からなくなるの。」

母親は決まり台詞のように毎回言ってくる。

そう、哲司が何かを探すたびにだ。


母親が言うことは、一応は理解している。

そうすれば良いのだとも思いはする。

思いはするのだが、行動が伴わない。

だから、「哲司は、風呂屋の看板だ」と父親にも嫌味を言われる。

つまりは、言う(湯)ばっかしだと・・・。



「ん? 少し、難しかったかな?」

祖父が心配そうに哲司の顔を覗き込んでくる。


「ううん・・・、大丈夫だよ。何となくは、分かる。」

哲司は、まだ頭の整理が付いてないから、取り敢えずはそう答える。

きっと、これ以上は分かり易くは出来ないのだろうと思うからだ。

祖父は、そういう点はとても優しかった。

哲司の目線にまで下がって話をしてくれる。


「あははは・・・、何となくか・・・。

ま、それでも良いだろう。いつか、何かにぶつかったときに、ふと思い出してくれればそれで良い。あん時、爺ちゃんが言ってたよなって・・・。

ただな・・・。」

祖父は、そこで意識してなのか、一旦言葉を止める。


「ただ?」

哲司が問い返す。


「今も言ったように、仏様へご飯をお供えするという仕事は、明日から哲司にやってもらう。

でもな・・・、ただ単に、ご飯を盛って、それを仏壇の前に持って行って、そして、少ししたらそれを下げてくるって、そんなもんじゃあないんだ。

やったから分かると思うが、作業そのものはそんなに難しいものじゃあない。

いや、3年生の哲司にとったから、簡単なことだろう。

それこそ、チョチョイのチョイだ。」

(た、確かに・・・。)

哲司は、気持の中でそう相槌を打つ。それが実感だったからだ。


「爺ちゃんが頼んでるのは、そこに婆ちゃんやご先祖様のためにっていう気持を込めてほしいってことなんだ。

それが、本当の意味での“仕事をする”ってことだからな。」

祖父は、一言一言を噛んで含めるようにゆっくりと言ってくる。



(つづく)



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