第8章 命が宿るプレゼント(その149)
「ええっ! 1週間?」
哲司は、そう声を上げる。
別に、その1週間を長いとか短いとか思ったわけではなかった。
ただ、1週間=7日間で、竹笛を作り上げると言われたことがショックだったのだ。
出来るんだろうか? 僕でも・・・。
そこに不安があった。
何しろ、作ったことが無いのだ。
いや、それは竹笛だけではない。
工作という作業自体、殆ど経験したことが無かった。
その一方で、祖父や母親が心配したような「我慢できるのだろうか?」という不安は無かった。
確かに、自宅での生活とは、何ひとつをとってみても、同じものは無い。
極端に言えば、衣食住のすべてがまったく違うのだ。
ある意味、不便を感じることもあった。
トイレでも、いちいち外に出なければいけないなどだ。
それでも、ここでの生活を嫌だとは思っていなかった哲司である。
どうしてなのか。
それは、哲司自身にもよく分かっていなかった。
「ああ・・・、今夜から練習をさせてやるからな。」
祖父は、頬っぺたを膨らませるようにして言ってくる。
「ん? れ、練習?」
そんなものが必要なのか。
哲司は、その点が分からない。
スポーツじゃああるまいし、工作の練習なんて聞いたことが無い。
「ああ・・・。今日、ああして、竹笛にする竹を乾かしているだろ?」
「う、うん・・・。」
哲司は、それを並べた縁側の方に視線を向けて答える。
「今日一杯じゃあ無理だからな。
実際に使えるようになるのは明後日ぐらいだろう。」
「ええっっっ、あさって?」
「そうだ。だから、今夜からは、小刀などの道具を使う練習をする。
そうでなければ、無駄な夜になるだろ?」
「う、う~ん・・・。」
哲司は、練習と聞いて、答えを渋る。
何でもそうなのだが、練習というのが嫌いだった。
出来れば、何でもいきなり本番にもって行きたかった。
「火といっしょでな、小刀も、その使い方を間違うと、とんでもないことになるからな。
指を落としたり・・・。」
祖父は、自分の指を1本持つようにして言ってくる。
「ええっっっ・・・。指を落とす?」
哲司は眉間に皺を寄せる。
(つづく)