第8章 命が宿るプレゼント(その148)
「・・・・・・。」
哲司は開いた口が塞がらなかった。
ど、どうして・・・、そんな余計な事を・・・。
そう思ったのは事実である。
「今朝、お母さんに電話を掛けた。」
祖父が種明かしをしてくる。
「えっ! ど、どう言って?」
「いや、わざわざ法事に来てくれてありがとうってな。」
「そ、それだけ?」
「う~ん、ついでに、哲司の宿題を送るようにって・・・。」
「ど、どうして?」
「それは、さっきも言ったろ?
爺ちゃんのところに、ただ遊びに来るようであれば、それはお母さんが“うん”とは言わんだろ?」
「だ、だからって・・・。」
「そ、それに、哲司がどれくらいここにいるのか、それが分からんだろ?」
「う、う~ん・・・。」
哲司は、ここにいる間は、母親から「はい、勉強」「はい、宿題」と言われずに済むと安堵していたのに・・・、と思う。
「実はな。」
「ん?」
「哲司が、今朝になったら、“もう帰る”って言うんじゃないかって思っててな。」
「ど、どうして?」
「友達もいないし、面白い事は何も無い。
だから、一旦はここに残るとは言ったものの、それを撤回するんじゃないかって・・・。」
「そ、そんなこと・・・。」
哲司は、自分ではそんなこと、思いもしなかったから驚いてしまう。
「ああ・・・、でも、そうじゃないって分かったからな。
で、宿題を送るように電話したんだ。」
「で・・・。」
「ん?」
「お母さん、なんか言ってた?」
哲司はそれが気になった。
「い、いや、別に・・・。ああ、少しは驚いていたかな?」
「ど、どうして?」
「お母さんも、哲司がすぐに帰りたいって言うだろうって思ってたみたいでな。
たからなんだろう。
本当に大丈夫かって、何度も訊いてた。」
「・・・・・・。」
哲司は、何とも言えない複雑な思いがする。
それで良かったような、悪かったような・・・。
「まあ、竹笛も、1週間ほどで出来上がるだろう。
それまで、哲司、ここで我慢が出来るかな?」
祖父は、にっこり笑うようにして問いかけてくる。
(つづく)