第8章 命が宿るプレゼント(その147)
「う、うん・・・、そ、そうだったねぇ・・・。」
哲司は、我が事ながら、どうしてか第三者的に捉えていた。
それほど積極的でもなかったからかもしれない。
「で、でも・・・、それが、どうして“最後のチャンス”なの?」
哲司は、なかなか次の話に入らない祖父を見て問う。
たった今、そう言った筈だった。
「ん? ああ・・・、“最後のチャンス”ってことか・・・。」
祖父は、自分で言っておきながら、その言葉を遠くに置いていた。
「・・・・・・。」
哲司は黙って祖父の言葉を待つ。
ここで何かを言うべきではないような気がしたからだ。
もちろん、どうしてなのかは分っていない。
「いやな・・・。こうして、哲司がこの爺ちゃんの家に泊まるのも、これが最後かも知れんなと思ってな。」
祖父は、静かにそう返してくる。
「そ、そんなことは・・・。僕、また泊まりに来るよ。」
「そ、そうか?」
「う、うん。約束しても良いよ。」
「そうか・・・。約束してくれるのか・・・。」
祖父はそう言って笑顔を見せたが、それでも、その笑顔がどこか笑っていないように哲司は感じた。
「う、うん。来年も、再来年も来ても良いよ。
お母さんが“良いって”言ってさえくれれば・・・。」
祖父の笑顔にある陰を見たからか、哲司は、ふとそんな言葉までを付け足した。
もちろん、思い付きではあるが・・・。
「そ、そうか・・・、お母さんがなぁ・・・。」
「・・・・・・。」
「そ、そうだな。そのためには、ちゃんと宿題の工作を作らなきゃあな。
それに、他の宿題もだ。」
「えっ!?」
「だ、だって・・・、そうだろ?
そうした学校の宿題もしなかったら、お母さん、ここに来ても良いとは言わんだろ?」
「で、でも・・・。他の宿題、持って来てないもの。」
哲司は、それは救いだった。
「その点は大丈夫だ。」
「ん?」
「宅配便で哲司の宿題、送ってもらうことになっとる。」
「ええっっっ! そ、そうなの?!」
「ああ・・・、明日ぐらいには到着するだろう。
どれぐらいあるのかは知らんが・・・。」
祖父は、そう言って哲司の頭に手を置いた。
(つづく)