第8章 命が宿るプレゼント(その146)
「うっ! ・・・。」
哲司は言葉に詰まった。
いや、反射的に口を押さえたからだ。
蓋を開けた途端、中から焦げ臭い匂いが上がってきた。
「どうだ? 中の火、綺麗に消えてるだろ?」
「う、うん・・・。」
「その中にある燃え残った薪は、次に、そこでまた炊くときに使うんだ。」
「つ、使えるの?」
「ああ・・・、人間と一緒でな、灰になるまでは役に立つんだ。
いや、灰になったらなったで、それでも役に立つように出来ているんだ。」
「・・・・・・。」
「その壷の中に溜まった灰は、また肥料として土に戻すんだ。」
「つ、土に・・・、戻す?」
「ああ・・・、海に生まれたものは海に・・・。そして、地上に生まれたものは土に帰る。
そうして、何千年も、何万年も、生き物は自分たちの子孫を残してきた。
それが、生きるものの権利でもあるし義務でもある。」
「・・・・・・。」
「少し、難しかったか?」
祖父が訊いてくる。
哲司の口数が少なくなったからだろう。
「ううん・・・、そんなことはない・・・。」
哲司も即座にそう答える。
別に、難しい話だとは思っていない。
ただ、日頃は考えもしなかったことだから、改めて「そ、そうなんだなぁ~」と感心しただけである。
「爺ちゃんはなぁ~・・・。」
祖父は、珍しく、その後の言葉を言いよどんだ。
「これが最後のチャンスだと思ってな・・・。」
「ん?」
哲司は、その意味が分からなかった。
「だから、“ここに残るか?”って訊いたんだ。」
「?」
「哲司が、“何か竹細工で作りたい”って言ったろ?」
「ああ・・・、そういうこと?」
哲司は、そうした会話の場面を思い出す。
何のことはない。
囲炉裏の傍で、祖父が竹細工をしているのを見て、ふと、そう思っただけだった。
夏休みの宿題に「工作」があったのを思い出してのことだ。
あわよくば、祖父に作ってもらえるかもしれないと、ずるいことを考えたのも事実だった。
「で、“じゃあ、ここに残って何か作るか?”ってことになった。」
祖父は、その場面での結論をそう表現した。
(つづく)