表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
794/958

第8章 命が宿るプレゼント(その133)

「ん? どうした?」

祖父は、哲司が言葉に詰まったのを感じたようだった。


「じ、爺ちゃんがひとりで住んでる・・・。」

哲司は、その祖父の言葉に釣られるようにして言った。

で、すぐさま後悔をする。

「ひとりで・・・」と言うんじゃなくって・・・、「住んでる人数」とでも言えば良かったと。


「ああ・・・、なるほどなぁ・・・。」

祖父は、どうしてか感心したように小さく頷きながら言って来る。

それでも、どうやら、それを言わせたいとは思っていなかったようだ。

続いて言葉を投げ来る。


「ほ、他には?」

「う、う~ん・・・、も、もうないよ。それぐらい。」

哲司が根負けをする。



「風通しが良いだろ?」

祖父は、何を思ったのか、そこから見える縁側の先に視線を向けて言って来る。


「ん? 風とおし?」

「ああ・・・、こうしてじっとしていても、風は外から入って来て、家の中を流れて、それでまた外へと出て行く。」

「う、うん・・・。そ、そうだね・・・。」

哲司も、祖父の視線の先を追うようにして答える。

物理的には、確かにそうだからだ。

否定する事ではない。


「だから、気持が良いだろ?」

「う・・・、うん・・・。」

哲司は、少しだけ詰まる。

本音は、クーラーがあるほうが望ましいと思うからだった。


「それと同じでな・・・。」

「ん?」

「この家だと、誰がどこで何をしていようとも、互いの存在が手にとるように分かる。」

「ん? 手に取るように?」


「ああ・・・、そうだ。

今、誰がどこにいて、どんなことをしているかってのが、こうしてここに座っているだけで分かるってことだ。」

「へ、へぇ~・・・、そ、そうなの?」

哲司にはそのままは受け入れられなかった。

如何に閉じられた部屋が殆ど無いと言っても、まさか、そこまでは・・・。

そう思う気持があったからだ。


「昨夜だって、哲司が何か楽しそうな夢を見ていたらしいってことも、爺ちゃんには分かってる。」

「ええっ! ど、どうして?」

哲司には、祖父の言葉は驚きだった。

まさに、そのとおりだったからである。



(つづく)




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ