第8章 命が宿るプレゼント(その133)
「ん? どうした?」
祖父は、哲司が言葉に詰まったのを感じたようだった。
「じ、爺ちゃんがひとりで住んでる・・・。」
哲司は、その祖父の言葉に釣られるようにして言った。
で、すぐさま後悔をする。
「ひとりで・・・」と言うんじゃなくって・・・、「住んでる人数」とでも言えば良かったと。
「ああ・・・、なるほどなぁ・・・。」
祖父は、どうしてか感心したように小さく頷きながら言って来る。
それでも、どうやら、それを言わせたいとは思っていなかったようだ。
続いて言葉を投げ来る。
「ほ、他には?」
「う、う~ん・・・、も、もうないよ。それぐらい。」
哲司が根負けをする。
「風通しが良いだろ?」
祖父は、何を思ったのか、そこから見える縁側の先に視線を向けて言って来る。
「ん? 風とおし?」
「ああ・・・、こうしてじっとしていても、風は外から入って来て、家の中を流れて、それでまた外へと出て行く。」
「う、うん・・・。そ、そうだね・・・。」
哲司も、祖父の視線の先を追うようにして答える。
物理的には、確かにそうだからだ。
否定する事ではない。
「だから、気持が良いだろ?」
「う・・・、うん・・・。」
哲司は、少しだけ詰まる。
本音は、クーラーがあるほうが望ましいと思うからだった。
「それと同じでな・・・。」
「ん?」
「この家だと、誰がどこで何をしていようとも、互いの存在が手にとるように分かる。」
「ん? 手に取るように?」
「ああ・・・、そうだ。
今、誰がどこにいて、どんなことをしているかってのが、こうしてここに座っているだけで分かるってことだ。」
「へ、へぇ~・・・、そ、そうなの?」
哲司にはそのままは受け入れられなかった。
如何に閉じられた部屋が殆ど無いと言っても、まさか、そこまでは・・・。
そう思う気持があったからだ。
「昨夜だって、哲司が何か楽しそうな夢を見ていたらしいってことも、爺ちゃんには分かってる。」
「ええっ! ど、どうして?」
哲司には、祖父の言葉は驚きだった。
まさに、そのとおりだったからである。
(つづく)