第8章 命が宿るプレゼント(その130)
「子供って、毎日その顔が変わるんだ。」
祖父は自分の顔に両手を当てるようにして言ってくる。
「ええっ! そ、そうなの?」
哲司は驚く。いや、呆れると言った方が近い。
「ああ・・・。
もちろん、基本的な容姿が変わるわけじゃあないんだが、その日その日で、その子の気持が顔に表れて来る。」
「・・・・・・。」
「哲司だってそうだろ?
その日、嬉しい事があったりすれば、やっぱりにこにこしてるだろ?
逆に、嫌な事があれば、やっぱり暗い顔をしてるだろ?」
「う、う~ん・・・、そ、それはそうかもしれないけど・・・。」
「それを一瞬にして読み取れるのが親なんだ。」
「分かるってこと?」
「ああ、そうだ。
具体的なことは分からなくても、“ははあ~ん、何かあったな・・・”って。」
「そ、それで?」
哲司は、そうと分かったときの対処の方法が知りたかった。
「子供にもそれぞれ個性があるからなぁ~。
同じ姉妹でも、皆、顔も違うし性格も違う。
だから、その子に合わせた訊き方をしてたかな?」
「ど、どんな風に?」
「嬉しそうにしていると、皆がいる前で“何か、良いことがあったんだろ?”って訊くんだ。
するとな、子供は、その嬉しかったことを報告して来るんだ。
“実は、今日、学校でこんな事があって・・・”ってな。」
「そ、それで?」
「その時には、一緒になって喜んでやるのさ。
そう大したことじゃなくってもな。
褒められるような事だったら、もう一度、親として褒めてやる。」
「・・・・・・。」
哲司は、そうした経験がなかったように思う。
思い出そうにも、何ひとつ思い出せない。
「で、難しいのは、暗い顔をしているときなんだ。
つまりは、落ち込んでいるときだな。
それは、皆がいるところでは敢えて訊かない。
後で、個別に呼んで訊いてやるんだ。
“学校で、何かあったのか?”ってな。」
「そ、そしたら?」
哲司は、より関心が高まる。
それは、自分と重ねられるからだ。
「それが、子供の性格によるんだろうな。
素直に、“こんな事があって辛かった”とか、“こう言われて悔しかった”とか言える子もいるが、それが言い出せない子もいる。」
「お、お母さんは、どうだったの?」
哲司は、是非ともそれが聞きたかった。
(つづく)