第8章 命が宿るプレゼント(その126)
「仲間って?」
哲司が問い返す。
どうしても、祖父が言う「友達」と「仲間」の違いが釈然としないからだ。
それに、哲司自身は、クラスの子を仲間だと思ったことがなかったからでもある。
「皆、仲良く。
先生や親がそう言うのは、決して間違っちゃあいない。
それでもなぁ・・・。
その本当の意味が、子供には伝わっていない。
肝心のところが言えてない。教えられていない。
だから、そうした感覚のズレが起きるんだろうな。」
祖父は、自分で言って自分で頷く。
「・・・・・・。」
哲司は黙るしかない。
「仲良くするってことは、友達になれってことではない。」
「えっ! ち、違うの?」
「ああ、いがみ合うなってことだ。」
「イガミアウって?」
「そ、そうだなぁ・・・。
敵意を持つな、憎むな、喧嘩をするなってことだ。
簡単に言えば、嫌いになるなってことだ。」
「き、嫌いに・・・。」
「クラスの子全員と友達になれればそれに越したことはない。
それが理想だろう。
でもな。やっぱり、それは無理だろ?」
「う、うん・・・。」
哲司も、その点は頷ける。
「だから、友達にならなくとも、少なくとも嫌いにだけはならないようにしよう。
それが、先生が、本当に皆に言いたいことなんだ。」
「だ、だったら・・・。」
「あははは・・・、どうして、そう言わないのかってことか?」
「う、うん・・・。」
「それは、先生もそう教えられてきたからだ。
それしか言い方を知らないんだろうな。
その言い方じゃあ、正確には伝わらないのが分かっているのにだ。」
「・・・・・・。」
哲司は、担任教師の顔を思い浮かべる。
「子供も先生も、本質的には昔とそんなに変わっちゃあいない。
それでも、子供同士、先生と子供、そして先生と親、さらには親と子供・・・。
そうした間の意思疎通が随分と下手くそになってきたんだ。
だから、今のように、どことなくギクシャクとした学校教育になってしまってる。」
祖父は、そう言ったかと思うと、急いで席を立った。
(つづく)