第8章 命が宿るプレゼント(その123)
「そうだなぁ・・・。そういうときに、ふらっと出てくるのが、そのふたりとはあんまり親しくはない子なんだな。」
祖父は、遠い昔を思い出しているような顔をする。
「ど、どうして?」
哲司はその場面が想像できない。
「片方の子の友達だと、当然に、その友達の肩を持つだろ?
つまりは、親しい子の味方をするってことになる。」
「う、うん・・・。」
哲司も、それは当然だろうと思う。
自分でも、きっとそうするだろうと思う。
自分の友達が苛められていたら、それはやはり助けようとする。
出来るか出来ないかは別にしてもだ。
「昔の子は、そうしたこともちゃんと分っていたんだな。
だから、そのどちらの子とも友達とは呼べないような子、つまりは第三者的と言うか、中立的と言うか、そんな子が間に入るんだ。」
「そ、それで?」
哲司はその成り行きが気になる。
「暴力は駄目だよって・・・。」
「えっ! ただ、それだけ?」
哲司は驚いてしまう。
そんなことでイジメが止まるとは思えない。
「そうするとな。殴った子も殴られた子も、その周囲を見る時間が生まれる。
そういうとき、クラスの皆が、そのふたりの周囲に集まってくるんだな。」
「そ、それで?」
「別に、何かを言ったりするんじゃないんだが、ただ、誰と誰が喧嘩をしているのかを見届けに集まるんだ。
それと、止めに入った子を無言で応援するんだ。」
「えっ! 応援? そ、それで、どうなるの?」
「それで収まるさ。」
「ええっ! ど、どうして?」
哲司は信じられない。
「それがクラスってもんだ。つまりは、仲間なんだ。
友達じゃあないけど、仲間なんだ。」
「・・・・・・。」
哲司には理解できない。
「友達同士ってのにも、ちゃんとしたルールがあるだろ?
それと同じで、仲間には仲間のルールがある。」
「・・・・・・。」
「そのルールも、先生が決めるんじゃなくって、クラスの皆が話し合って決めるんだ。
そして、それを紙に書いて、教室に張り出すんだ。」
「へぇ~・・・、そうだったんだ・・・。」
「今の子って、そうして自分たちでクラスのルールを決めてるのか?」
祖父は、冷たいお茶を継ぎ足して言って来る。
(つづく)