第8章 命が宿るプレゼント(その120)
「クラスってのは、そうして、いろんな子がいるってことが貴重なんだ。
哲司のように、勉強はちょっと苦手だけれど、体育のことは任してくれって子もいる。
その逆で、体育は苦手だけれど、勉強のことなら負けないぞって思う子もいる。
その他、音楽が他の子より得意だったり、特定のスポーツなら任しておけって子もいるだろう・・・。」
「・・・・・・。」
哲司は、祖父が例示するタイプに近い子の顔を思い浮かべながら聞いている。
「特定のって?」
哲司が口を挟む。
「例えばだな、卓球とか、テニスとか、柔道とか・・・。
それは、学校で習っているんじゃなくって、どこかのそうしたクラブに所属してたりしてな・・・。」
「ああ・・・、なるほど・・・。」
哲司は、そうした子がテレビに出ていたのを思い出す。
「それに、体格的にも、性格的にも、いろんな子がいるだろ?」
「タイカクって?」
「それは、身体の大きさなんかだ。
背の高い低いもあるし、体重の重い軽いもある。
それに顔だな。」
「か、顔? カッコいいかってこと?」
「あははは・・・。ま、それもあるが・・・。
何よりも、その子らしいものだろ?
同じ顔はふたつと無いんだからな。」
「・・・・・・。」
そ、それは、そうだ、と哲司も思う。
「そうしたいろんな子が集まっているのが、クラスという集合体なんだ。」
「シュウゴウタイって?」
「つまりは、学校でのいろんなことを共同で行う仲間だってことだ。」
「な、仲間・・・。」
「そうだ。仲間ってのは、必ずしも仲が良い子ばかりがいるものじゃないんだ。」
「う~ん・・・。」
哲司は、分かるような分からないような、何とも中途半端な感じがする。
反論したい気持も無くはないのだが、だからと言って、祖父に向かって言葉に出せるだけの纏まりはない。
「だから、貴重なんだ。」
「ど、どうして?」
哲司は納得できない。
「自分には無いものがそこには沢山あるってことだ。
哲司が出来ない事を簡単にやってしまう子もいるだろ?
その逆に、皆が出来ない事を哲司が簡単にやってしまう事だってある筈なんだ。
つまりは、お互いに、自分に足りないものを、その仲間の力で補ってもらえるんだ。
そう考えたら、こんな貴重でありがたい場所は他に無いだろ?」
祖父は、かまどの火を見ながら、赤い顔で言って来る。
(つづく)