第8章 命が宿るプレゼント(その118)
「クラスメイト・・・。良い言葉じゃないか?
爺ちゃんの時代は、そんな横文字なんか使いたくっても使えなかったんだしなぁ・・・。」
祖父は、顎に手を添えるようにして言う。
「う、う~ん・・・、カッコいいとは思うけれど・・・。」
哲司は、ふと本音が洩れる。
カッコいい言葉だとは思うのだが、そうして改めて祖父の説明を聞くと、どうも自分が思っていたのとはちょっと違うような気がしないでもない。
「そりゃあな、クラスでも、好きなタイプの子もおれば、どうにも合わないタイプの子もいる。
それは、爺ちゃんも認める。」
「で、でしょう?」
「でもな、だからと言って、その好き嫌い、気が合う合わないだけで友達になるかならないかって決めるのもおかしいと思うんだ。
少なくとも、同じクラスの子なんだろ?
一緒に勉強し、一緒に運動会もし、一緒に歌を歌ったりもするんだろ?」
「そ、それは・・・、そうだけれど・・・。」
「つまりは、どの子とも、そうした共同作業をすることになるんだな。」
「・・・・・・。」
哲司は、とうとう言葉が出せなくなる。
だから、黙って頷くだけになる。
言われれば、確かにそうだからだ。
「その、共同作業、つまりは何かを一緒にやる仲間だと思うことが大切なんだ。」
「で、でも・・・。」
哲司は、クラスの中にいるどうにも気に食わない子の顔を思い浮かべている。
とても、友達どころか、仲間とも認めたくは無い奴の顔をだ。
「そうした共同作業をする中で、きっと、哲司は、そのクラスにとってなくてはならない存在になっているんだろうな。
だから、苛められることが殆ど無いんだろう。」
「ん? なくてはならない?」
「そうだ。皆が、哲司の存在をそれなりにちゃんと認めてくれているってことだ。
良いも悪いも含めてな。」
「ん?」
哲司は、祖父が言った最後の言葉が妙に引っかかる。
「哲司は確かに良い子かも知れん。
でもな、決して100点満点じゃあない。
な、そうだろ?」
祖父は、哲司の顔を覗き込むようにして言って来る。
「う、うん・・・。勉強は出来ないし・・・。」
哲司は、100点満点と聞いて、途端にしょげてしまう。
勉強はやっぱり苦手だ。
「あははは・・・。別に、そういう意味で言ったんじゃあない。」
祖父は豪快に笑って言う。
(つづく)