第8章 命が宿るプレゼント(その117)
「ん? 哲司は、嫌いな子とは友達になりたくないのか?」
祖父は、まるで哲司がそう質問をしてくるのが分かっていたように切り返してくる。
「なりたくないって言うより、なれない。
やっぱり、好きな子と友達になりたいし・・・。」
哲司はシンプルに言う。
他の子も、きっと同じではないかと思っている。
いや、子供ばかりではない。
お父さんやお母さんといった大人も、きっとそうに違いないと思う。
学校の先生にだって、好き嫌いはある。
「哲司は、同じクラスの子のことを英語でどう言うか知ってるか?」
祖父は、哲司の言葉を否定も肯定もしないで、またまた次の話を持ってくる。
かまどの焚き口から薪を放り込みながらだ。
「ええっと・・・、クラスメイトって言うんでしょう?」
哲司は、誰かが言っていた言葉をそのまま引用する。
内心、カッコいい言葉だと思っていた。
「ほほぅ~、よく知ってるんだな。そのとおりだ。」
祖父は、一応は褒めてくれる。
「ところでだ・・・。そのクラスメイトのメイトって何だ?」
それでも、祖父はすかさず次の質問を投げてくる。
“ほら、来た!”と哲司は思った。
祖父が簡単に褒めてくれると、その次が怖いことは身体で感じていた。
何度もこうしたやり取りがあったからだ。
「メイトってのは・・・。」
哲司も必死でその言葉を聞いたときの場面を思い出そうとする。
それが思い出せれば、きっとこの質問にも答えられそうな気がしたからだ。
だが、残念なことに、それは頭のどこからも出てくることはなかった。
「メイトってのは、友達とか仲間ってことなんだぞ。
だから、クラスメイトってのは、同級生、つまりはクラスの仲間ってことだ。
好き嫌いで考えるものじゃないんだ。」
「・・・・・・。」
「哲司は何でも食べられるようだな? 好き嫌い無しに・・・。」
「う、うん・・・、一応は・・・。」
「それと同じなんだ。
好き嫌いしないで何でも食べる。
それが、健康で健全な食生活の基本だ。
それと同じで、友達関係ってのも、好き嫌いせずに、誰とでも一応は付き合ってみる。
それが、健全な人間関係の基本なんだ。
分かるか?」
「う、う~ん・・・。」
哲司は答えに詰まる。
(つづく)