第8章 命が宿るプレゼント(その116)
「う、う~ん・・・、な、なるほど・・・。」
哲司は唸るしかない。
「で、その逆もある。」
祖父が見せた掌を裏返すようにして言う。
「ん? ぎゃ、逆って?」
哲司は、その「逆」というのが分からない。
「哲司が友達とは思ってなくても、周囲には哲司の事を自分の友達だと思っている子がいるってことだ。
それも、数人ってことじゃないだろうな。
何十人といるんじゃないのかな?」
「ええっ! な、何十人も?」
哲司には、そうした感覚はまったく無い。
それはいくらなんでも無いだろうと思う。
「ああ、多分な。
だから、哲司はイジメに遭わない。
少なくとも、爺ちゃんは、そう思うんだ。」
「・・・・・・。」
「今のクラスは何人いるんだ?」
祖父は、また手で次の薪を運んで来るように指示しながら訊いて来る。
「えっと・・・、僕を入れて丁度30人だよ。」
哲司は土間の中を移動しながら答える。
「そうか・・・、30人か。少ないなあ・・・。」
「ど、どうして? どのクラスも、殆ど同じだよ。
ひとりふたりの違いはあるけれど・・・。」
「哲司のお母さんが通ってた小学校じゃあ、確か40人以上いたような・・・。」
「そ、そんなに?」
「もう少し前は、もっと多かった。
1クラス50人を超えた時代もあったしなあ・・・。」
「そ、そんなに!」
哲司には想像がつかない。
今のクラスでも、教室はそんなに広いとは思えない。
そこに50人も・・・。
「あははは・・・。時代なんだなぁ・・・。
でもな、哲司。
クラスというものは、50人いようが、30人であろうが・・・、基本的には皆が友達なんだぞ。」
「ええっ! そ、そうなのかなぁ・・・。」
やはり、哲司は納得できない。
「同じクラスだと、嫌いな子でも友達だってこと?」
哲司は、真剣な思いで訊いている。
(つづく)