第8章 命が宿るプレゼント(その115)
「と、友達?」
哲司は、次の薪を運んできて問い返す。
「ああ・・・、そうだ。友達だ。」
「・・・・・・。」
哲司は、「友達」という言葉で思い浮かぶ子は数少なかった。
放課後、学校を離れてからも、一緒に遊べる子、一緒に遊びたくなる子がそれだと思っていたからだ。
学校が終わると、基本的には校庭で遊ぶ。
サッカーボールやドッヂボールなども学校から借りられるからだ。
それに、何と言っても、住んでいる町内がかなり離れている子達とも遊べるからだ。
そして、野球やサッカーのように人数が必要な球技が可能だからだ。
それでも、哲司は、そうした学校内で遊べる子を「友達」とは意識していなかった。
単に、「知ってる子」ぐらいだ。
どうしてか?
そう問われても、哲司に答えはなかった。
感覚の問題だろう程度にしか思っていなかった。
「哲司は、友達が多いんだろ?
だから、苛められないんだ。」
祖父は、そう決め付けるように言って来る。
「そ、そんなことは・・・。」
哲司は、とても「そうだね」とは答えられない。
祖父が言ったふたつのこと、そのいずれもが違うような気がしてならない。
ひとつは「友達が多い」ってことだし、もうひとつは「だから苛められない」ってことだ。
「ん? 間違ってるか?」
祖父は、哲司の雰囲気を察してか、そう問うてくる。
「う~ん・・・、友達って、そんなに多くはいないし・・・。」
哲司は、不安になって、そう本音を言う。
祖父に誤解されたくはなかった。
「そ、そうか・・・。だとしたら、哲司は、自分勝手に“友達”ってものを考えてるんだな?」
祖父は、少し考えるような顔をしてゆっくりと言う。
「ん? 自分勝手にって?」
「哲司が、自分の基準で友達かそうでないかを決めてしまってるってことだ。」
「そ、それって、駄目なこと?」
祖父がそう言う以上は、恐らくはそうなのだろうと思って哲司は確認をする。
「友達は、相手があってのことだ。
つまりは、哲司だけの基準で決められることじゃあないってことだ。
哲司が友達だと思っていても、相手の子が同じように哲司のことを友達と思ってくれているかは分からないものだろ?」
祖父は、噛んで含めるようにして言って来る。
(つづく)