第8章 命が宿るプレゼント(その112)
「良いテレビ?」
哲司は小さな声で訊く。
そんなものがあるのだろうかと思ったからだ。
「だから、言葉はこの火と一緒なんだ。」
祖父がかまどの焚き口から燃えている枝を取り出してきて言う。
まるで哲司の言葉が聞こえなかったようにだ。
「ええっっ! ????」
哲司は、益々戸惑うことになる。
言葉と火が一緒だとは・・・。
「良いか。言葉も火も、形があるものではない。」
祖父が哲司の戸惑いに答えるように言って来る。
「そして、どちらも人間が生きていくうえで、なくてはならないものだ。」
「う、うん・・・。」
哲司も、その点は頷ける。
「でもな、その使い方を誤ると、それは人間を傷つけることになる。
傷だけで終われば良いが、最悪は人を殺してしまうことだってあるんだ。」
「・・・・・・。」
哲司は、小さい頭で懸命に考える。
火がそうした事故に繋がる可能性があることは何とか理解できる。
それでも、言葉がその火と同じだとは到底思えない。
「だから、この火も言葉も、人間がちゃんと正しく使いこなせるかどうかなんだ。
火の扱いを間違うと大火事になる。
そして、言葉の使い方を間違うと、人の心を傷つける。」
祖父は、今までの話を纏めるように言う。
「おっと・・・、もうそろそろだな。」
祖父は、かまどの火に視線を張りつける。
「哲司。あそこに積んである薪を持ってきてくれ。」
祖父が続けて言って来る。
そして、土間の壁際に積んである薪の山を指差す。
「う、うん・・・。」
哲司が小走りに行く。
「どれくらい?」
「哲司が持てるだけで良い。一度では無理だろうからな。」
「う、うん・・・。」
哲司は、不揃いな薪を両手で抱きかかえるようにして祖父の所まで持っていく。
「これからがパッパだ・・・。」
「ん?」
「初めチョロチョロ、中パッパ・・・。」
祖父は、また笑顔に戻ってそう言ってくる。
(つづく)