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第8章 命が宿るプレゼント(その109)

「だから、今はテレビを見てると、訳の分からない言葉ばっかりが取り上げられてる。」

祖父は苦笑いをする。


「ん?」

「ええとな・・・、“チョーカワイイ”とか“チョーイケテル”とか・・・。」

祖父は、言い難そうに言う。


「う、うん・・・、それって変なの?」

哲司には違和感が無い。

日頃耳にしている言葉と変わらないからだ。


「その“チョウ”ってのがな・・・。」

「ど、どうして?」

「その意味は、物凄くってことなんだろう?」

「そ、そうだけど・・・。」


「だったら、物凄く可愛いとか言えば良いのに・・・。」

「う、う~ん・・・。」

哲司は、どう答えれば良いのか分からない。

それでも、「チョウ」とつける方が何となく実感がこもっているように思う。


「俗に言う“流行り言葉”を意識してるんだろうな。

それを使うことが時代の最先端を行く人間だとでも思っているのか。」

「・・・・・・。」

「でもなあ、そうした流行り言葉なんて、翌年になればもう使われなくなる。

それでも使おうものなら、“フル~”って言う。

つまり、馬鹿にする。

それって、まるで言葉遊びだ。言葉を弄んでいる。言葉ヘの冒涜だ。

爺ちゃんは、そう思う。」

「・・・・・・。」

哲司はそれに答えられる言葉が見つからない。



「難しい言い方をすれば・・・、言葉は結果を生み出すもんなんだ。」

「ん? 結果? どういう結果?」

哲司は、祖父が言っている意味が分からない。

それでも、何とかこの話題についていこうとはする。


「言葉って、自分だけが使うものじゃない。

そうだろ?」

「う、うん・・・。」

「つまりは、その言葉を聞いてくれる人がいるから話すんだろ?」

「そ、それは、そうだけど・・・。」


「つまりはだ。何かを聞いて欲しいから、それを言葉にするんだ。

伝えたいこと、言いたいこと、知っていて欲しいこと・・・。

そうしたものがあるから、それを言葉という道具を使って他の人間に伝えるんだな。」

「う、うん、そうだね。」

「それが、言葉が持つ本来の役目なんだ。

それなのに、今のテレビは、その言葉を自分だけの言葉として使う人間ばかりになってしまった・・・。」

祖父は、ひとつ大きく首を横に振って言う。




(つづく)




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