第8章 命が宿るプレゼント(その107)
何かの雑誌で見た記憶がある。
髪はぼうぼうで、男も女のように長く伸ばしていた。
そして、動物の毛皮を身にまとっていた。
で、手には大きな石斧のようなものを持っていた。
棒の先に石を括りつけたものだ。
そうした人類が絶滅したかもしれない・・・。
祖父は、明確にそう言っているのだ。
「だからな、さっきも言ったとおりだ。
人間は、言葉と火を使うことで生きてきた。
そして、繁栄してきた。
言葉だけでも、そして、火だけでも駄目だったはずだ。
その両方を人間が使いこなせたからこそ、現代のような高度な文明を作れたんだ。」
「う、うん・・・。」
哲司は、祖父の言葉に頷くしかなくなる。
「でもな、最近になって、どうにも、それを使いこなせない人間が出てきたように思うんだ。」
「ん? それって、どういうこと?」
「ひとつは、言葉だ。
最近の若者は本を読まない。
哲司もそうじゃないか?」
「う、う~ん・・・。」
「もっと本を読めって言われて無いか?」
「そ、それは・・・。」
「やっぱり言われてるんだな?」
「・・・・・・。」
哲司は黙って頷く。
「本だったら何でも良いとは言わない。
やはりな、ためになる本を読むことが大切だ。
しかも、ちゃんとした日本語で書かれた本をだ。」
「ちゃんとした日本語?」
哲司は、その意味が分からない。
「漫画も本だと言えばそうだわな。
でもな、あれは言葉だけで面白いもんじゃあない。
漫画という絵があるから面白いんだ。
そうじゃないのか?」
「う~ん・・・、そう言われれば、そうかもしれないけど・・・。」
哲司は、どうして祖父が漫画を引き合いに出すのかが理解できなかった。
「本当は、文字を読んだだけで面白いと感じるのが良い本なんだ。
つまりは、書いてある中身が面白いってことだな。」
「・・・・・・。」
哲司は、絵の無い漫画を想像してみる。
(つづく)