第8章 命が宿るプレゼント(その103)
「おっ! よく気がついたなぁ・・・。」
祖父は言葉が通じた外国人のような顔をしてみせる。
「で、でも・・・、よく分からないけど・・・。」
哲司は素直に言う。
「“初めチョロチョロ”ってのは、その言葉どおりだ。
最初は、チョロチョロと燃やし始めろってことなんだ。」
「ああ・・・、だからなの?」
哲司は、折角火が付いたのに、祖父がなかなかその火を大きくしないことに気が付いていた。
どうしてなんだろう。そう思っていたところだった。
「そうだ。ここで一気に火を大きくしないんだ。ゆっくりとで良いんだ。
どうだ? 哲司も、薪をくべてみるか?」
祖父は、哲司の顔を見て言ってくる。
その顔に、焚き口の火が赤く反射する。
「う、うん・・・。」
哲司はやってみたくなる。
自分が付けたマッチの火が、こうして次第に大きくなっていくのが嬉しくもあった。
「じゃあ、ここに座ってみな。」
祖父は、自分が一歩引くようにして、哲司がしゃがめるスペースを空けてくれる。
「熱くなるから、真正面じゃなくって、やや斜めから見るようにするんだ。
そうでなかったら、すぐに顔が日焼けしたときのようにヒリヒリしてくるからな。」
祖父は、そう言いながら、哲司の位置取りを微妙に調整してくる。
「そこに、小枝が積んであるだろ?」
「ああ・・・、これ?」
「そうだ、そいつを少しずつで良いから、入れていくんだ。
こういう風にな・・・。」
祖父は、1本の小枝を手にして、哲司の前で焚き口の中へとそれを突っ込んでいく。
と、その枝がパチパチパチという音を立ててオレンジ色の炎の中へと消えていく。
「す、凄い・・・。」
哲司は感嘆する。
こんな間近で、物が燃えていくのを見るのは生まれて初めてだった。
「な、だから、自然ってのは素晴らしいだろ? どこにも、無駄が無い。」
「ん?」
「この小枝は、山に落ちている物を拾ってきたものだ。
つまりは、枯れ枝だな。
その役目を終えて、地面に戻ろうとしていたんだ。」
「し、死んだってこと?」
哲司は単純にそう思ったことを口にする。
「う~ん・・・、そうじゃあない・・・。」
祖父は、少し考える風な顔をしてからそう答えてくる。
(つづく)