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第8章 命が宿るプレゼント(その102)

「そうだ、それと一緒で、人間はその有り難味を忘れてしまっとる。

そして、その怖さもな。」

祖父は、かまどの焚き口から見える火をじっと見つめるようにして言う。


「う、うん・・・。」

マッチを持つ手が震えた哲司は、その「怖さ」の部分にだけ同調する。



「哲司は、こんな言葉を知ってるか?」

「ん?」

祖父が突然に話を切り替えてくる。

哲司は、その顔を覗き込む。


「初めチョロチョロ、中パッパ、赤子泣いても蓋取るな・・・。」

「な、なに、それ?」

「やっばり、知らんか?」

「うん、初めて聞く。」


「飯の旨い炊き方だな。」

「えっ! い、今のが?」

哲司は、祖父が言った、まるでお経か呪文のような言葉を思い出せなかった。


「昔はな、こうしてかまどで飯を炊くのは、田舎から出てきた女の子だったんだ。

そうだなぁ・・・。今の哲司ぐらいの歳になると、そうして女中奉公に出されたんだ。」

「ええっ・・・、ぼ、僕ぐらいで?」

「ああ、そうだ。

そうした女の子に、こうしてかまどで飯を炊く時のポイントを教えたのが今の言葉だ。」

「・・・・・・。」

哲司は、もう一度、その言葉を聞かせて欲しかった。

頭には全然残っていない。


「ん? どうした?」

さすがは祖父である。

そうした哲司の顔を読んでくる。


「あははは・・・。

じゃあ、もう一度言うぞ。」

「う、うん・・・。」

哲司は、今度は背筋を伸ばすようにして聞く態勢をとる。


「正確に言うとな。

“初めチョロチョロ、中パッパ、ぶつぶついう頃火を引いて、ひと握りのわら燃やし、赤子泣いても蓋とるな”ってことになるんだ。」

祖父は、今度は意識してなのだろう。

一節一節を区切るようにして言ってくる。


「・・・・・・。」

意識を集中させて聞いているつもりだったが、やはり哲司にはよく分からなかった。

それでも、その言葉に出てくる「火」だとか「わら燃やし」という単語から、どうやらこのかまどの火についての説明がなされているらしいってことだけは感じた。


「それが、これ?」

哲司は、かまどの火を指差して確認する。




(つづく)





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