表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
760/958

第8章 命が宿るプレゼント(その99)

「ええいっ!」

哲司は小さく声を掛けた。

そうでもしなければ、なかなか動き始められない気がしたからだ。


「よしっ!」

哲司の気合が通じたのだろう。

祖父が添えている手に少しだけ力を加えてくる。


「パチッ!」と音がした。

哲司の脳裏には、先ほど祖父がやって見せたように、そのマッチ棒の先から火が燃え上がる光景が浮かんだ。


だが・・・。現実は、そうとはならなかった。



「惜しい! もうちょっとだったのになぁ~。」

祖父がそう言って残念がる。

当の本人である哲司よりも残念に思ったかのようにだ。


「ん? あれ?」

哲司は、ある意味ではほっとした。

で、大きな深呼吸をする。


「う~ん・・・、もう少し強く擦るべきだったかな?

怖いと思ってやると、どうしても力が半減するからな。」

祖父は、そう解説してくる。

火が付かなかったのは、哲司の気持の中に「怖い」との思いがあるからだと。


「じゃあ、もう一度だ。

さっきより、少しだけ早く手を動かすんだぞ。

そうすれば、きっと上手く行く。

やり方全体としては決して間違って無いからな。」

祖父が激励をしてくる。


「う、うん・・・。もう少し早く?」

「ああ、そうだ。こっちの手を、もう少しだけ早く動かすんだ。」

祖父はそう言って哲司の右手を掴んでくる。

そう、マッチ棒を持つ手だ。


「う、うん。分かった。」

哲司は、イメージを作ろうとする。


「肩の力を抜け。そんなに力は要らないぞ。」

祖父はそう感じるのだろう。

哲司の両肩を自分の胸で押さえるようにして言ってくる。


「・・・・・・。」

哲司は、黙って頷く。



「じゃあ、やってみな?」

哲司の決心を後ろから押すように祖父が言う。




(つづく)





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ