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第9章 命が宿るプレゼント(その95)

「確かに、子供にマッチを使わせるのは危険なのかもしれん。

だけどなぁ・・・。

火を使いこなすことと、言葉を使ってコミュニケーションを取れるってのが人間の条件なんだし・・・。」

祖父は、そう言って、何とか自分を納得させようとしているようだ。

少なくとも、哲司にはそう思えた。


「じょ、条件?」

哲司は、祖父が呟いた言葉を拾い上げる。

何となく気になったからだ。


「ああ・・・。人間が他の動物と違うのは、火を使えることと、言葉を話せることだ。

イルカや犬など、いわゆる高等動物と呼ばれる動物には言葉を使えるものもいるそうだから、人間しか出来ないことってのは、最終的には火を使いこなせるってことだろう。」

「そ、そうか・・・。」

哲司は、聞いていてなるほどと思う。


「それなのに、今の親は、その火をコントロールすることを子供に教えない。

つまりは、火の扱い方を教えていない。

これは、学校でもそうだ。」

「・・・・・・。」


「確かに、火は、その扱いを間違うと大事おおごとになってしまう。

何もかも燃やしてしまうからな。」

「か、火事になるってこと?」

「ああ、そうだ。

今でも、不注意から出火した火事ってのは結構多い。

煙草の不始末、天麩羅油を入れたフライパンからの出火などな・・・。

確かに、子供の火遊びが原因ってのもあるが、それは圧倒的じゃあない。

つまりは、大人でも、その扱いを間違うと大火事になるってことだ。」

「う~ん・・・。」

そう言われると、哲司はますますマッチに手が出なくなる。


「だからこそ、子供のときから、その火の扱いをしっかりと教えておくべきだ・・・。

爺ちゃんはそう思っとる。」

「・・・・・・。」

だからなのか。僕にマッチを使ってみろって言うのは・・・。

哲司はそう理解する。



「ということでだ・・・。」

祖父は、改めて哲司にマッチ箱を手渡そうとしてくる。


「・・・・・・。」

哲司は、黙ってそれを受け取る。

いや、受け取るといった積極的なものではない。

どちらかと言えば消極的にだ。

そっと差し出した手に、祖父がマッチ箱を乗せてきただけだ。


「そう、おっかなびっくりになる必要は無い。

マッチ箱から火が出る訳じゃあないからな・・・。」

祖父は、緊張した顔をしている哲司に向けて笑顔で言ってくる。




(つづく)





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