第8章 命が宿るプレゼント(その88)
「そうして考えると、不思議だろ?」
祖父は、チラッと時計に視線をやって言う。
「ん?」
哲司は、祖父が言った意味が分からない。
「それから50年以上も生き続けている漫画だ。
爺ちゃんは新聞で毎日楽しんだし、哲司のお母さんなんかは本になったものをにこにこしながら読んでいた。
そして、哲司は、今、毎週のようにテレビで見ている。」
「そ、そうだねぇ・・・。」
「哲司、面白いと思うんだろ?」
「う、うん・・・。」
「それって凄いことだと思わんか?
哲司が生まれるずっと前から描かれてきた漫画だ。
それなのに、風化しない。」
「フウカって?」
「そ、そうだなぁ・・・。色あせない。面白さが変わらないってことだ。
他に、それにそんな漫画は見られない。
これだけ長期間人々に愛された漫画はない。
そして、それは、これからも続くだろうと思う。
いや、これからは、もっと人気が出るかもしれない。」
「ど、どうして?」
「それはな・・・。
きっと、そこに描かれているのが、理想的な家族だからだろうと・・・。」
「理想的な家族?」
「ああ・・・。
もう、取り戻そうにもなかなか取り返せない家族の形があの“サザエさん”にはある。」
「・・・・・・。」
哲司は、祖父の言葉に何も言えない。
「おっ! もうそろそろだな。」
祖父が立ち上がるようにして言う。
「ん? な、何が?」
「おいおい・・・、あれから30分経ったぞ。
覚えておいてくれって言ってたのに・・・。」
「ああっ! そ、そうか・・・。」
哲司は言われていたことを思い出す。
米を研いだら、30分そのまま置いておくのだと教えられていた。
「哲司は、本当に一極集中型なんだなぁ・・・。」
祖父が哲司の頭に手をやってきて言う。
「ん?」
「つまりはだ。ひとつのことに意識が行くと、他のことは頭から消えていく。」
「えへへへ・・・。」
哲司は、そう言って苦笑いをする。
(つづく)