第8章 命が宿るプレゼント(その72)
「よし! じゃあ、哲司、その多かった方の米を6合に減らしてくれ。」
祖父は時計を見てそう言った。
どうやら、余計な事に時間を費やしたとでも言いたげだった。
「ん? こ、こっちの方?」
哲司が最初に計った方のボールを指して言う。
「ああ、それは1杯分多くって、7合入ってたろ?
それは多すぎるから、ちゃんと6合にしておいて欲しいんだ。
爺ちゃんが言っている意味は分かるよな?」
祖父は、にっこりとしながら言ってくる。
まるで、哲司がどう反応するかを楽しんでいるようにだ。
「へ、減らすって・・・。やりなおすってこと?」
哲司が確認する。
元に戻して、最初からやり直せと言われる方が気が楽だった。
「いや、そうすれば、さっきの作業が完全に無駄になるだろう?」
「む、無駄?」
「ああ・・・、だからな、そこから、1合だけを取り除けば良いんだ。」
「あああ・・・、そ、そっか・・・。」
「簡単な算数だな。」
「う、うん・・・、そうだね。」
哲司は、ようやっと言われた意味が理解できる。
「じゃあと・・・。」
哲司は、そう言って、その7合が入ったボールの米の中に、先ほど使った1合升を入れる。
そして、その中に、丁寧に米を注ぎいれる。
「こ、これで良い?」
祖父に向かって確認をする。
「ああ、それで良いんだ。よく出来ました。」
祖父は楽しそうに言う。
「じゃあ、これを米櫃の中に戻すんだよね?」
「ああ・・・、そうしてくれ。」
哲司は、祖父の言葉を確認してから、米櫃の中へとそれを戻す。
「ついでに、そのボールは、あっちの戸棚の中へ入れておいてくれ。
明日、それを炊くことにするからな。」
祖父は、台所の端においてある戸棚を指差して言ってくる。
「う、うん・・・、分かった。」
哲司は言われたとおりに戸棚の中へとそのボールを入れた。
「じゃあな、次は、この米を研ぐんだ。」
祖父がお釜の中に入れた米を指差して言う。
「トグ? 洗うんじゃないの?」
哲司は、米は炊く前に洗うものだとの先入観があった。
(つづく)