第8章 命が宿るプレゼント(その68)
「集中?」
哲司は読みも出来ないし、書けもしない。
「ある時間、今やっていることだけを考える。決して他の事は考えない。
そういう意味だ。」
祖父が解説してくる。
「さっき、升で数えながら入れていたとき、哲司、最初の時は爺ちゃんと話しながらやっていた。」
「う~ん・・・、そうだった?」
哲司には、そうした意識はなかった。
「ああ、そうだった。
で、爺ちゃんに、本当に6合なのかと言われ、もう一度、この鍋に同じ量を入れてみろって言われて、今度は真剣になった。
つまりは、哲司が本気になったってことだ。」
「本気? う~ん・・・、そうでもないけど・・・。」
「いや、そうだった筈だ。
その証拠に、2回目は、哲司、一言も喋ってない。」
「・・・・・・。」
「その結果、今、秤で確認したとおり、その2回目の方が正しかったんだな。」
「う、うん・・・、それは、そうだけれど・・・。」
「簡単な作業なんだが、それでも、いい加減な気持でやると、ふと間違ったりする。
さっきも言ったとおり、その間違いが自分にだけ影響するのであれば、まぁ、それでもいいだろう。
この場合で言えば、不味い飯を食うのが哲司だけなら、それでもいいだろう。
不味いって思うのは哲司だけなんだからな。
言わば、自業自得だ。」
「ジゴウジトクって?」
「そうだな、簡単に言えば、自分のおこないの結果を自分が受けるってことだ。
つまりは、自分の責任だってことだ。」
「ぼ、僕の責任?」
「そうなるだろ?
爺ちゃんは、6合の米をお釜に入れてくれって頼んだんだ。
それなのに、哲司は、最初7合の米を入れてたんだな?」
「う、うん・・・。」
「それをそのまま炊いていたら、きっと硬い飯が炊き上がっていた筈だ。
それを哲司だけが食うのなら、それでも良かったかも知れん。」
「そ、そんなの嫌だよ。」
「だろ? それは、爺ちゃんだって嫌だ。同じ食べるなら、やっぱり旨い飯を食いたいものな。
と、言うことはだ、哲司の勘違いが、爺ちゃんや丸子ちゃんに影響するんだ。
何も悪くないのにだ。
爺ちゃんが言っていることは分かるだろ?」
祖父は、その点を押さえるように言ってくる。
(つづく)