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第8章 命が宿るプレゼント(その64)

「ん? ど、どうしてだ?」

祖父は、哲司がそう言い切ったことに疑問を呈する。


「ええっ! ち、違うの?」

哲司は、あくまでも後から計った方が、つまりは今秤の上に乗っているものがきっちり6杯数えていたという自負があって言う。


「じゃあ、今からそれを確かめようじゃないか・・・。」

祖父は、にやりと笑って言ってくる。


「た、確かめる?」

哲司は、言われた意味がよく分からない。



「哲司は、算数が苦手か?」

祖父が突然に訊く。


「さ、算数?」

哲司は、天敵とも言えるその単語に身震いする。


「あははは・・・。やっぱり、そうなんだな?」

「あ、あんまし、得意じゃないけれど・・・。」

哲司は、2年生で習った九九も完璧には覚えられていない3年生である。


「良いか、覚えておくんだぞ。 米1合は大凡150グラムだ。」

「150グラム?」

「ああ、そうだ。もちろん、絶対というわけじゃない。

湿気を含んでおればもう少し重たいだろうし、乾いた米であればもう少し軽い。

それでも、ひとつの“目安”として米1合は150グラムだ。」

「う、うん・・・、それで?」

哲司は、そう言われる意味が分ってはいない。


「米1合が150グラムだと、6合だと何グラムだ?」

「ええっ! ・・・・・・。」

哲司は絶句する。

まさか、こんな場面で算数の問題のようなことを聞かれるとは思ってもみなかった。


「簡単な掛け算だな。どうだ?」

「う、う~ん・・・。」

「暗算が無理なら、そのチラシの裏で書いて計算しても良いぞ。」

「わ、分かった・・・。」

哲司は、書ける自信も無いままに、それでもそのチラシを前に鉛筆を持つ。


だからと言って、手が勝手に動くわけではない。

それでも、哲司は足し算を繰り返そうとした。


掛け算は出来ない。

従って、150グラムを6回足すことにする。

これだと、時間は掛かっても、何とかやれそうだ。


「どうだ? 何グラムになった?」

祖父は、優しげな声で訊いてくる。

哲司は必死で鉛筆を握り締める。




(つづく)





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