第8章 命が宿るプレゼント(その62)
(た、確か・・・、このハカリは重さを計るもの・・・。
で、でも・・・、6合っていう重さは無いし・・・。)
哲司は眉間に皺が寄る思いだ。
「良いか。これから爺ちゃんが言うことは大切なことだ。
よ~く聞いて、覚えて置けよ。」
「う・・・、うん・・・。」
哲司は、生唾を飲み込んで答える。
「この升で計れるのは“量”だ。
米を計っても、砂糖や塩を計っても、水や酒を計っても、さらに言えばポン菓子を計ってもそれは同じ1合という量になる。」
「そ、そのポンガシって?」
「ああ・・・、そりゃあ、哲司は知らないだろうな。
まあ、今で言えば、ポップコーンのようなものだ。」
「ポ、ポップコーン?」
「でもな、だからと言って、その重さが同じかと言えば違うんだな。
つまり、“量”と“重さ”は別なんだ。」
「・・・・・・。」
哲司は、相変わらず難しい顔をしている。
聞けばそのとおりだと思えるのだが、少しでも角度を変えられると、もう答えられなくなる。
それが、学校や家でのいつもの哲司だった。
「哲司、学校から遠足に行くだろ?」
「う、うん・・・。」
「その時にだ、このビニール袋一杯に入るものだったら、何でも好きなおやつを入れていけると言われたとしよう。」
「う、うん・・・。」
「哲司だったら何を入れる?」
「う~ん・・・、チョコレートかな?」
「ホップコーンはどうだ?」
「う、うん・・・、それでも良いよ。」
「でもな、よ~く考えてみな?
この袋一杯のチョコレートって相当に重たいぞ。
食うのも大変だが、運ぶのも大変だ。
その点、ポップコーンだったらどうだ?」
「か、軽いよね。」
「だろ?
それと同じで、同じ1合という量でも、その中身によってその重さは全然違ってくる。」
「う、うん・・・、そうだね。」
こう言われると、哲司でも頷けるから不思議だ。
「そこでだ。このふたつのボールの重さを計ってみる。」
祖父は、そう言ったかと思うと、ひとつ目のボールを秤の上に乗せた。
(つづく)