第8章 命が宿るプレゼント(その59)
「う、う~ん・・・。」
哲司が考える。
「どうした?」
祖父がその声を耳にして訊いて来る。
「も、もし、もう6杯分が入っているとしたら?」
哲司は、そう確認する。
「そうだな、次に入れたら、7合の米を炊くことになる。
しかもだ、6合にあわせた水の量で炊くから、当然に水分不足が起こって、炊き上がった飯は硬いものになるな。
つまりは、不味い飯が7合も炊き上がることになる。」
「・・・・・・。」
「でも、哲司はまだ5杯しか入れてないんだろ?」
「う、うん・・・、そのはずなんだけれど・・・。」
「どうした? 自信が無いのか?」
「う~ん・・・。」
「哲司、迷うんだったら、時間が掛かっても良いから、やり直せ。
その方が、確実で、より安全だろ?
失敗しても、自分だけが痛い目に遭うだけなら思い切ってやってしまうのもひとつの手だ。
でもな、この飯は、哲司も食うけれど、爺ちゃんも食うんだ。
おまけに、明日、この飯で作った握り飯を丸子ちゃんに届けることになるんだぞ。
つまりは、哲司の失敗が、哲司だけに留まらないことになる。
他の人に影響を与える。
そうした場合には、迷ったら、やり直すべきなんだ。」
「・・・・・・。」
「な、良いか?
一度、炊いてみて、それを食ってみて、それで駄目なら一からやり直すって方法もある。
でもな、それは炊き上がるまでの時間や手間がすべて無駄になるってことだ。
今、やり直せば、たった数分の無駄で済む。
そうは、思わないか?」
「・・・・・・。」
「よし! 哲司は、ある程度、自分のやったことに自信があるようだな。
だったら、こうしよう。
この釜には、哲司が言うようにもう1杯分を入れる。
そしてだ、こっちの鍋に、また改めて6杯分の米を入れてみてくれ。
その重さを量ってみれば、同じ6合なのかどうかが分かるだろ?
それで、まったく同じであれば、明日炊く分を今日区分けしたってことで、無駄がなくなる。」
「ああ・・・、それ、良いね。」
哲司は、ようやく自分も納得が出来る。
「じゃあ、早速、今言ったようにしてみてくれ。」
祖父は、にっこりと笑って言ってくる。
(つづく)