第8章 命が宿るプレゼント(その55)
「ええっっっ! べちゃべちゃのご飯?」
哲司は、その手が一瞬止まった。
「ああ、米6合に合わせた水を入れて炊くからな。
1杯少なくて5合の米だったらべちゃべちゃの炊き上がりになるだろうし、逆に1杯多くて7合の米だったら硬い飯になる。」
「・・・・・・。」
「だから、哲司の家でも、お母さん、そうして計ってるだろ?」
「う~ん・・・。」
「どうした? 見たことが無いのか?」
「うちでは、こんなマスって使ってないよ。」
「ん? じゃあ、どうして計るんだ?」
「計量カップって言うの? プラスチックで出来たコップみたいなやつ。
それを使ってるよ。」
「そ、そうか・・・、計量カップか・・・。」
「う、うん。それに、そのカップだと、ちゃんと目盛りが付いてるし・・・。」
「ふ~ん・・・。」
祖父は、どうしてか不満そうにそう言っただけだった。
「ど、どうして、このマスには、目盛りが付いてないの?」
哲司はふと気が付いて訊く。
「それは、その必要が無いように作ってあるからだ。」
祖父は、至極簡単に答えてくる。
「ん? ど、どういうこと?」
哲司は言われた意味が分からない。
「その升は1合を計るために作られたものだからだ。」
「う、うん・・・。
で、でも・・・、じゃあ、この半分にしたいときは?」
哲司は苦手な算数の問題を解くように言う。
「おう、なるほどな。良いところに気が付いたな。」
祖父は、まずはそう言って褒めてくれる。
そして、説明を続けてくる。
「升にはな、3勺升、5勺升、8勺升という小さなものもある。」
「ん? その“しゃく”って?」
「勺は、合の1/10だ。つまりは、10勺が1合となる。」
「ああ・・・、そうなんだ・・・。」
「だからな、今、哲司が言ったように、その半分を計りたい場合は、5勺升を使えば良いんだ。」
「ああ・・・、そ、そうなんだ・・・。」
「逆に、もっと大きな升もある。
今、哲司が使ってるのが1合升なんだが、倍の2合升ってのもあるし、2合半升ってのもある。
もっと言えば、5合升にその倍の1升升ってのもある。
だから、その必要に応じた升を上手く組み合わせて使ってたんだな。
昔は・・・。」
祖父は、懐かしそうに言ってくる。
(つづく)