第8章 命が宿るプレゼント(その53)
「哲司も手伝ってくれ。」
祖父はそう付け加えてくる。
「う、うん・・・。」
哲司は、そうは答えたものの、具体的なイメージは持っていなかった。
家では、そう言われたこともなかったし、もちろんしたこともなかった。
強いて言えば、自分が使った食器を流しまで運んだ程度だ。
「お~い・・・、哲司・・・。」
台所へと行った祖父が呼ぶ。
哲司が縁側から動かなかったからだ。
「は、は~い・・・。な~に?」
哲司は何とも心許ない返事をする。
「手伝ってくれるんだろ?」
「う、うん・・・。」
祖父が再確認をするように問い、哲司もこれまた同じようにして答える。
「だったら、こっちに来てくれ。」
「う、うん・・・。」
哲司が縁側から台所へと行く。
「その中に、米6合を入れてくれ。」
祖父が指差した先には、大きなお釜があった。
「えっ! こ、これで炊くの?」
哲司は驚いた。
ご飯は、電気炊飯器で炊くものだと思っていたからだ。
事実、昨日までは、母親達がそうしていた。
「ああ・・・、今日からはな・・・。」
祖父がニコニコしながら肯定してくる。
「ど、どうして? 炊飯器は使わないの?」
哲司としては当然な思いだ。
「哲司と爺ちゃんのふたり分だろ?」
「う、うん・・・。」
「それを、その都度電気炊飯器で炊いても旨くない。
だから、今晩から、明日の昼までの分を一気にこの釜で炊くんだ。
こいつで炊くと、一段と旨くなる。」
「ふ~ん・・・、そうなんだ・・・。」
哲司は、納得するようなしないような中途半端な気持でいる。
「で、6ゴウって?」
哲司は、米の計り方らしいとは思ったものの、その実態が分からない。
「そこの米櫃をあけてみな。そこに、升が入ってる。」
祖父が顎でそう言ってくる。
「こ、これ?」
哲司は米櫃だけは知っていた。
(つづく)