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第8章 命が宿るプレゼント(その49)

「下手であっても、コンビニに並んでいるものと比べたら不揃で不恰好な握り飯なんだろうが、哲司は、あの残った握り飯を心配してくれた。」

祖父は、哲司の顔を覗き込むようにして言ってくる。


「う、うん・・・。」

それは、自分でも不思議に思う哲司だ。


「嬉しかったかな?」

「・・・・・・。」

祖父がにっこりと笑い、哲司は苦笑いをする。


「そこに、爺ちゃんを感じてくれたってことが・・・だな。

で、それをあの丸子ちゃんに届けるんだって言ったら、哲司は僕が届けるって言ってくれた。」

「う、うん・・・。」


「哲司が、思った以上に優しい良い子に育ってるって思ったんだ・・・。」

「そ、そうなの?」

「ああ・・・、そうして、他人のことを思いやれる子になってるって・・・。」

「・・・・・・。」

哲司は、そうした部分を褒められたのは初めてだったから、正直、どう反応すれば良いのか分からない。



「だから、何でも、まずは自分でやってみる、作ってみるってことが大切なんだ。

哲司は、明日から、お昼の握り飯も作るし、こうして竹笛も作ろうとしている。」

「・・・・・・。」

「学校の勉強ももちろん大切だ。それは秀吉と家康の話で分かっただろ?」

「う、うん・・・。」

哲司は、勢いに任せてそう答える。

いや、そう答えざるを得ない流れに持っていかれている。


「それでも、秀吉がそうだったように、先人、つまりは先輩達がやって見せるいろんなことをじっと見て盗むことも大切なことなんだ。

そういうことは、学校でも教えないしな・・・。」

「・・・・・・。」


「実は、哲司の様子をお母さんから聞いていて、きっとそうした前向きな気持もなくなってしまった子なのかと心配をしていたんだ。」

「ん?」

「そう言われる心当たりはあるのか?」

「う、う~ん・・・。」


「でもな、爺ちゃん、昨日から今日に掛けて、こうして哲司とじっと向き合っていて、決してそんな子じゃないんだってことがよ~く分かったんだ。」

「・・・・・・。」


「ちゃんと、子供らしい素直な部分を持っているし、それなりに他人のことも思いやれる優しさも持っている。

ただ、そうした部分に、哲司自身が気がつけていない。

どうも、そんな気がするんだ。」

「気が付いていないって?」

哲司は、言われることの意味が分からなかった。




(つづく)





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