第8章 命が宿るプレゼント(その48)
「ああ、そいつだ。」
祖父は大きく頷いた。
「ん? ど、どうして?」
哲司は他の竹と同じように見えるから訊く。
「もう相当に歪んでいる。」
「ほ、本当に?」
「ああ・・・、さっきみたいに転がしてみな?」
「こ、こう?」
哲司が新聞紙の上でその竹を転がすようにする。
「ああ・・・、分かった・・・。」
哲司は、掌に竹が揺れるのを感じて言う。
「だろ? 見た目だけじゃ分からないが、そうして平らなところで転がしてみれば分かるだろ?」
「う、うん・・・。凄いや・・・。」
哲司は、祖父の眼力に舌を巻く。
「その竹は除けておいてくれ。」
「す、捨てるの?」
哲司は、どうしてかそれが気になった。
やはり、自分が精魂込めて洗ったのにと言う思いがあるのかもしれない。
「い、いや、捨てはしない。竹の使い道はたくさんある。
この前から夜に作っていた竹細工は、そうした竹を利用したもんだ。
だから、それもその材料になる。」
「そ、そうなの? ああ・・・、良かった。」
「あははは・・・、何でもそうだ。」
「ん? なにが?」
「だからな、そうして哲司がその竹のことを気にするのは、自分が自分の手でああして洗ったからなんだろ?」
「う~ん・・・。」
「何も恥ずかしがることじゃあない。いや、どっちかと言えば、胸を張ったら良いんだ。」
「・・・・・・。」
「人間ってのは不思議なもので、他人にしてもらうとごく当たり前に感じることでも、そうして自分の手でやってみると、そのことや物に愛着がわく。」
「・・・・・・。」
「握り飯だってそうだ。
コンビニで買ってきたもので、美味しくなければ、つまりは好きでなかったら哲司はどうする?」
「う~ん・・・、食べない。」
「捨てるのか?」
「う~ん・・・、お母さんも要らないと言ったら捨てるかも・・・。」
「だろ? でもな、哲司、今日の昼に出した握り飯が残ったのを見て心配したろ?
それは、どうするのかって・・・。」
「う、うん。」
「それは、爺ちゃんが握ったと分かっていたからだ。」
祖父は、手で握り飯を作る仕草をして言ってくる。
(つづく)