第8章 命が宿るプレゼント(その47)
「その点、家康は、小さい時からそうした勉強をさせられた。
小国と言えども、一国の主の家に生まれた子だったしな・・・。」
祖父は、まだその話を続けるようだ。
「そこが、秀吉との違いだったんだろうな。」
「ん?」
「まぁ、好きでやっていなかったとしてもだ、家康は少なくとも子供の頃から読み書きが出来た。
つまりは、以前に書かれた本や地図を読むことで、いろんな知識を得ていたんだな。」
「ち、地図も?」
「ああ・・・、戦国時代は、地図が読めるってことも大切な要素だったんだ。
敵を攻めるとき、その敵がどこのどんなところに陣地を敷いているのか、そうしたことが現地に行かなくってもある程度は分かったと言われるぐらいだ。
どこにどんな山があって、どこにはどんな川が流れていて・・・。
そう言ったことも、地図にはかかれてあったからな。
その地図が読めていなければ、いくら軍勢を差し向けても、負けてばっかりだったはずだ。」
「ああ・・・、そうか・・・。なるほど・・・。」
哲司は、戦争ゲームを思い出す。
確かに、そうしたことが分っていなければ、戦争には勝てない。
「秀吉は、いろんな上司に仕えながら、そうした事を身体で経験することで身につけていったんだろう。
で、その後から、文字の読み書きを覚えた。」
「・・・・・。」
「だからかもしれんな。
自分が経験して得たいろんな知識を、後世の子孫にちゃんと伝える事が出来なかった。
口で言うだけになっただろうからな。」
「・・・・・・。」
「秀吉の天下はその子供の代になって家康によって滅ぼされてしまった。
その一方で、そうしたいろんな経験や考え方をちゃんと後世に書き残せた家康の天下は子孫15代まで300年も続いたんだ。」
「・・・・・・。」
「それだけ、やはり、基礎的な勉強は、大きな人物になるためには、絶対に必要だってことだ・・・。
な、分かったか?」
祖父は、この点が最終の答えだとでも言うように、しっかりとした口調で言ってくる。
「な、何となくは・・・。」
哲司はそう答える。
決して納得をしたと言うのではなかったが、それでも、ここで黙っている訳には行かないだろうと思ってのことだった。
「おおぅ、その右から2番目の竹、そいつはもう駄目だな。」
祖父は、ふと新聞紙の上に並べられた竹に目をやって言ってくる。
「ん? これ?」
哲司がその竹を指差して訊く。
(つづく)