第8章 命が宿るプレゼント(その46)
「ど、どうして?」
哲司は、勉強もしなかった秀吉が天下を取ったことに拘った。
つまりは、勉強なんてしなくっても、天下は取れる。
そう思いたかったのだ。
「もちろん、その時代、百姓の子だった秀吉がそうした勉強をする必要性もなかったんだろうし、そうした場もなかった。
ただ、秀吉は、何とか侍になりたかったんだ。
つまりは、百姓が嫌だったんだな。
父親のようにはなりたくなかったんだろう。」
祖父は、意識してか、ゆっくりと話してくる。
「で、でも・・・、侍になったら、戦争しなくっちゃいけないんでしょう?」
「ああ、そうだなぁ・・・。」
「それって、怖くなかったの?」
「怖かっただろうな。爺ちゃんも嫌だものな。
それでも、秀吉は侍になりたかったんだ。
つまりは、それだけ野心と言うか、向上心と言うか、そうした強い気持があったんだろうな。
だから、最終的には天下を取れたんだろう。」
「でも、勉強はしてなかった・・・。」
哲司は、またまたその点に触れる。
勉強なんかしなくっても天下は取れると言って欲しかった。
「そこなんだ。」
「ん?」
「秀吉は、文字の読み書きが出来なかった。」
「でしょう?」
「でもな、結婚して、奥さんからそれを習ったんだ。」
「えっ! お嫁さんから?」
「ああ・・・、だから、大人になってからではあるんだが、ちゃんと勉強もしたんだ。」
「な、なんだ・・・。」
哲司は、少し残念に思う。
「それでもな、大人になってからだから、やはり、本を読んだりする機会が少なかった。」
「・・・・・・。」
「文字の読み書きってのは、基本的なことだ。
それを飛ばしては、例え、どんなことを勉強したくっても、本も読めやしない。
つまりは、そこから先に一歩も進まないってことだ。」
「・・・・・・。」
「今、哲司は、小学校の3年生だろ?
つまりは、その基本中の基本を学校で習っているんだ。
疎かにしちゃあ、あとあと苦しくなるぞ。」
「う、う~ん・・・。」
そう言われてしまうと、哲司は言葉が無い。
その点に触れたことを後悔する。
(つづく)
■読者の皆様へ
仕事の関係から、明日と明後日の2日間は更新が出来ません。
あらかじめ、よろしくお願いいたします。