第8章 命が宿るプレゼント(その40)
「そ、そう言えば・・・。」
哲司もテレビでそうした映像が繰り返し放送されていたのを思い出す。
まるでウルトラマンと怪獣が戦った跡のように思えた記憶がある。
「自然からの警告なんだろうな。」
祖父が溜息が混じった声で言う。
「ケイコク?」
「ああ・・・、舐めるんじゃないぞってな・・・。」
「・・・・・・。」
「人間が作ったものに絶対は無いってことだ。
どんなに高度な技術を使おうとも、自然を超えることは出来ない。
そのことを忘れちゃあ駄目だぞってことなんだろう・・・。」
「・・・・・・。」
「だからな、哲司には、できるだけ不便な生活を覚えておいて欲しいんだ。」
「ふ、不便?」
「ああ、便利では無いってことだ。」
「ど、どうして?」
「それを知っていると、いざと言うときに生き延びられる。」
「生き延びる・・・。」
哲司は、そうした感覚を意識したことはなかった。
せいぜい、ドッヂボールで最後の選手になった時ぐらいだ。
「握り飯でもそうだな。
家じゃあ、コンビ二に行って買うだろ?」
「う、うん・・・。」
「阪神大震災の時、その日の午前中にそのすべてが売れたそうだ。
それでも、その後はどこからも運ばれてこない。
道路も何も壊れてしまって、どこからもそうした配送なんてなかったからな。
つまりは、コンビ二にも食べ物がなくなったってことだ。」
「・・・・・・。」
「あの自動販売機だってそうだ。ジュースや水を売ってる・・・。」
「ん?」
「電気が止まったんだ。そうした自動販売機だって動きゃあしない。
商品がそこにあって、お金もあるのに、そのジュース1本買うことも出来ないんだ。」
「ああ・・・、なるほど・・・。」
「で、そこで人間の本性が出てくる。」
「ホンショウ?」
「ああ・・・、その自販機をぶっ壊して、中のジュースや水を奪い合ったんだ。」
「えっ! そ、それって・・・、泥棒?」
「そうだな。他人のものなんだから、それをそうして奪えば泥棒だな。
でもな、そうせざるを得ないところまで追い詰められるんだ。
つまりは、それだけ冷静ではいられなくなる。」
「・・・・・・。」
「そうしたときに、原理原則を知っていた人は、ちゃんと生きる術を考えられたんだ。
火をおこして、廃材を集めて、そこで暖を取る。
そして、そこで米を炊いて握り飯を作る。
そうだな、昔から人間がやって来た最低限の生活手段だ。」
(つづく)