第2章 奈菜と出会ったコンビニ(その28)
哲司は、即答できなかった。
もちろん、即答すべき問題でもない。
昔はさておき、現代社会では、親や祖父母が「我が娘と付き合ってやってほしい」などと言ってくること自体が異常なことである。
確かに、哲司のオヤジの時代には「お見合い」と称する仲介制度があって、年頃の男と女が出会うための貴重なツールとして意義があったと聞く。
だが、哲司などの感覚からすれば、それは既に過去の話。まさに「昭和時代」の古きしきたりのように思える。
今は、男と女。出会うのは、合コンであったり、出会い系サイトというのが普通なのだ。
それも、あくまでも結婚などは前提としていない場合が殆どである。
要は、まずは「付き合ってみて」「相性を確かめてから」、それでもなお関係が続くようであれば、その後のことはそれから考える。
それが常識なのである。
だから、親や親戚が前面へ出てくることは考えられないのだ。
それなのに、このマスター、いや奈菜の祖父は、自ら「うちの孫娘と付き合ってみてくれ」と言うのだ。
あり得ないこととしての驚きがそこにある。
「付き合うって?・・・・奈菜ちゃんはどう言ってるんです?」
哲司はそこがまずは気にかかる。
当然である。
昭和時代じゃないのだから、あくまでも本人同士の合意が絶対条件である。
「もちろん、あの子もそのように願っております。」
マスターは、至極当然です、という顔をしてみせるが、哲司にはすんなりとは納得できない。
「でも、今まででも、ちょっと立ち話した程度ですよ。
それで、奈菜ちゃんがOKしますか?」
これも、今の時代では常識である。
「はい。それでも、貴方がいいと。」
マスターはそう主張する。
確かに、先ほどコンビニを出てくるとき、「私から頼んだの」という言葉は奈菜から聞いている。
だが、その言葉が「この俺と付き合いたいと思っている」ことの証明にはならないだろう。
第一、その強姦事件のことが白黒つかないのに、そんな気になるものだろうか?
そこに何か、奈菜の別の思惑があるような気がしないでもない。
「やはり、今回のことが引っかかりますか?
他の男の子供を妊娠した菜菜のことは、好きにはなれませんか?」
哲司が奈菜の本音に想いを巡らせていたのを、マスターはそのように理解したようだった。
(つづく)