第8章 命が宿るプレゼント(その34)
「ん? ステータスって?」
哲司は祖父の言った意味が分からなかった。
「う~ん・・・、どう言えば良いのかなぁ?
身分とか社会的な地位とか言う意味かな?
つまりは、僕んちにはこれがあるぞっていう優越感のようなものだ。」
「ふ~ん・・・、ゆうえつ感・・・。」
もちろん、哲司はその「優越感」と言う字は書けない。
それでも、その意味するところは何となくだが分かった。
「じゃ、じゃあ・・・、爺ちゃんところは、それだけ貧乏だったってこと?」
哲司は、言葉を選ばなかった。
それは、きっと、その先にいるのが祖父だったからに他ならない。
仮に同じことを思ったとしても、それが友達や近所の人だったら、きっとそうは問えていないと思う。
「ああ・・・、そうかもしれんな。
だがな、爺ちゃんの家に冷蔵庫がなかったのは、その必要がないと思っていたからなんだ。」
「必要がない?」
哲司は、まさかと思った。
今時、冷蔵庫のない生活なんて考えられない。
如何に昔の話だとしても、必要がなかったとは思えない。
「だからな、その3つで言えば、まず最初に買ったのは洗濯機だった。
その次が白黒テレビで、最後が冷蔵庫だったんだ。」
「・・・・・・。」
「どうしてだと思う?」
祖父が訊いて来る。
「いっぺんに買うお金がなかったから?」
哲司は単純に言う。
「あははは・・・。それもあったかも知れんが・・・。
何より、婆ちゃんの仕事が大変そうだったしなぁ・・・。
だから、洗濯機が真っ先になった。」
「・・・・・・。」
「さっき哲司が入っていたようなタライで洗濯をしていたんだ。
ああしてして、その傍にしゃがみ込んでな。
あの姿勢を長時間していると、腰が疲れるんだ。
それを毎日やっていたんだ。
だから、洗濯機が売り出されたことを知って、それだけは何とかしてやりたかったんだ。」
「婆ちゃんのために?」
「ああ、そう言うことだ。
いくら三種の神器だと言われても、必要のないものまで買う気はなかった。
そんな余分な金があるんだったら、少しは子供のために遣ってやりたかったしな・・・。」
「そ、そうなんだ・・・。」
哲司は、あって当然と考えた自分をちょっぴり反省する。
(つづく)