第8章 命が宿るプレゼント(その30)
「ヘェ~・・・、そ、そうなんだぁ・・・。」
哲司は、本心から感心する。
「爺ちゃんは、何でもよ~く知ってるんだねぇ・・・。」
哲司の実感である。
「あははは・・・。長い間生きてるからなぁ~。」
祖父は、そう言って笑う。
「で、でも、どうしてそんなにいろいろな事を知ってるの?
きっと、学校の先生でもそこまで知らないと思うよ。す、すごいなぁ~。」
「・・・・・・。」
哲司は祖父が何かを言うだろうと思ったのだが、祖父はただニコニコするだけだった。
黙って哲司の身体を拭いてくれる。
「よ~し! そのままで家の中へ入れ。パンツとシャツを出してやるから。」
拭き終わった祖父がそう言って哲司の尻をポンと叩いた。
「えっ! このままで?」
「他には誰もいない。フルチンでも良かろう?」
祖父は一段の笑顔を見せて言う。
「わ、分かった・・・。」
そう言ってから、哲司はすっぽんぽんの身体に、ズック靴だけを履いて家の裏口へと駆け出した。
誰もいないと分っていても、さすがにゆっくりとは歩けない。
で、台所まで入ってから、そこで祖父が来るのを待つ。
「昨夜、哲司が寝ていた部屋があるだろ?」
「う、うん・・・。」
「その部屋に、茶色の箪笥があったろ?」
「ああ、あった・・・。」
「その引き出しの一番下に哲司の服が入っている。
お母さんが入れておいてくれてる。
そこからパンツとシャツを出してきな。」
「は、は~い!」
どうしてか、哲司はウキウキした気分になっていた。
そして、その箪笥に向かって小走りで行く。
「ちゃんと入ってるだろ?」
台所に留まった祖父が大きな声で訊いて来る。
「う、うん・・・、入ってる。でも、どれでも良いの?」
引き出しを開けた哲司が、これまた大きな声で問う。
パンツはどれでも同じようなものだが、シャツだけはいろいろな色とデザインが入っていた。
ティシャツもあれば、ポロシャツもあった。
もちろん、普通のランニングシャツも入っていた。
「ああ・・・、哲司の好きなものにしろ。」
祖父が負けないようにと思うのか、一段と大きな声で答えてくる。
(つづく)