第2章 奈菜と出会ったコンビニ(その27)
「何がです?」
マスターは惚けたような顔をする。
「僕のことをお調べになったんでしょう?
だが、その結果はどうでしたか?と聞いているんです。」
哲司は、少しだけ頭にきた。
「はい、もうそれは・・・・、何も言うこともなく。」
そう言ったマスターの目はどこかしら泳いでいた。
「それで、その白黒って着きましたか?
僕がその当事者でない事は分ったんでしょう?」
哲司はなかなかその結果について言われない事に苛立ちが募ってくる。
「まあ、その調査では、そのような事の確認は取れないとのことでした。
警察ではないので。」
マスターはそのように説明をする。
だが、どこか奥歯に物が挟まったような言い方に聞こえる。
「だったら、そんな調査、しても意味がなかったってことですよね。
本当に、それだけのことで?」
哲司は次第に疑いを深めてきていた。
このマスター、つまり奈菜の祖父が言うとおりなら、調べた事すらもこっちは知らないのだから、そのまま黙って押し通せば済む事ではないのか?
わざわざ気を悪くするような事を言い出して頭を下げたのには、何か他の理由があるに違いない。
それがあるからこそ、こうして祖父が経営する喫茶店まで俺を呼び出したのに違いない。
哲司はだんだんそのような考えに傾斜していった。
だとしたら、これからどうするか?
である。
奈菜を妊娠させるようにことをしたのが俺ではない事だけは信用しているようだ。
だが、それであれば、マスターが言うところの「白黒」はそれで着いていることになる。
それなのに、その調査した事実に頭を下げてまで、奈菜が「助けて欲しい」という中身が見えない。
「巽さんは、奈菜のこと、お嫌いになられました?」
マスターが突然に訊いて来る。
「いえ、・・・・そんなことはありませんが。」
哲司も、この部分は素直に答える。
確かに、妊娠したのが事実だとすればそれまでの感情も変わるのかもしれないとは思ったのだが、ここまでの話を聞いていても、不思議とそんな変化は起きてこない。
「だったら、一度、じっくりと付き合ってやっていただけませんか?」
マスターは、いや奈菜の祖父はそう言ってじっと哲司の目を見つめてくる。
(つづく)