第8章 命が宿るプレゼント(その24)
「じゃ、じゃあ・・・、お母さんも、子供の頃、ちゃんと話してたの?」
哲司は、きっとそうでもないだろうとの感覚があった。
だからこそのツッコミである。
「ああ・・・、もちろんだ。」
祖父の答えは明快だった。
と、同時に、「ほんとうかな?」という疑問を哲司に抱かせた。
「昔は・・・、そうだな。少なくとも、お母さんが小学生の頃は、家にテレビもなかったしな。」
「ええっ! テ、テレビもなかったの?」
哲司は、そう聞いて、身体の動きが止まるほどに驚いた。
まさか、そんなに貧乏だとは思えなかったからだ。
今時、テレビのない家なんてありはしない。
友達の誰の家に行っても、テレビはある。
いや、さらに言えば、子供部屋にテレビが置いてある家さえある。
それなのに、祖父は、この家にはテレビもなかったと言うのだ。
「あははは・・・。哲司が、そう驚くのも当たり前かも知れんなぁ・・・。」
祖父は、また哲司の背中を流し始めて言う。
「でもな、丁度、テレビが各家庭に普及し始めた時代だ。
都会じゃ、そこそこ早くに買える家も多かったようだが、ここのような農村じゃあ、それこそ庄屋さんの家ぐらいだった。テレビを買えたのは。
第一、テレビを買っても、まだまともに映るチャンネルも少なかったしな。」
「・・・・・・。」
「だから、晩飯のとき、今みたいにテレビを見ながら、なんてことはなかったんだ。
で、自然と、“今日、学校はどうだった? どんな勉強をした?”って話題になるんだ。」
「ふ~ん・・・、そうだったんだ・・・。」
「だから、子供達も、それを分かっていたから、それをちゃんと話せるようになって来るんだ。」
「・・・・・・。」
哲司は、それでも、子供としては「言いたくない事は言わないだろう」という思いがあった。
「1時間目の授業は国語で、新しい漢字を5つ習った。
で、それはどんな漢字で、どれは覚えられたけれど、どれはまだちゃんと書けない。
そういう話をして来るんだ。」
「えっ! そ、そんなことまで?」
哲司は、「まさか」と思った。
「ああ、そうして順番に子供が話をしてくるんだ。
そうするとな、聞いている爺ちゃんなんかも、ああ、どの程度まで進んでいるんだってことがよ~く分かるだろ?」
祖父は、それが親子の会話として当たり前のことだったと言いたいようだ。
(つづく)