第8章 命が宿るプレゼント(その23)
「そ、そうなんだ・・・。」
哲司も、今の祖父の説明には、それなりに頷けるものがある。
書き取りの宿題をプリントで出されて、それは何とか教科書を見ながら書き込んだ。
そして、その翌日、そのプリントを提出させられた。
数日してから戻されてきたそのプリントには、赤いペンで「よく出来ましたね」と先生の一言が書いてあった。
その時には、哲司は「やっておいて良かった」と自分だけの立場で物事を考えていたが、よ~く考えれば、先生はクラス全員のプリントをチェックして、○を入れたり、修正を加えたりをしていたのだ。
その中の1枚が、たまたま哲司が提出したプリントだったというだけだ。
「だからな、本当は、先生だって宿題なんか出したくはない筈なんだ。
その後の作業が大変なんだしな。
それでも、宿題は大切なんだ。
だから、そうして毎日のように出すんだ。」
「・・・・・・。」
哲司は、何とも不思議な感じがして祖父の言葉を聞いている。
同じような話しは、学校の先生とも親とも話したことがあった。
「どうして宿題なんか出すのか?」
「どうして宿題ってやらないといけないのか?」
それでも、今の祖父のように、その意義を哲司が納得できるように説明された記憶はなかった。
「必要だから出しているの。」
「宿題はするのが当たり前でしょう?」
そうした議論で、終止符を打たれていた。
「だからという訳ではないんだが、やっぱりな、学校であった出来事は、それなりにお母さんには話をしておくことが大切なんだ。」
「う~ん・・・。」
哲司も、その話になると、いまだに「そうだね」とは肯定できない。
「宿題だってな、生徒に対して、今日の勉強を忘れないでねっていう意味もあるんだが、もうひとつは、そこまで進んでいるんですよという、父兄、つまりは生徒の親に対する先生の情報でもあるんだ。」
「・・・・・・。」
「子供に対する教育ってのは、学校だけ出るものじゃあないし、家だけでやれるものでもない。
つまりは、学校の先生とその子供の親との協力があってこそ、ちゃんと機能するもんなんだ。
そのどちらが欠けても、まともな子供は育たない。
そういうことなんだ。
だから、学校であったことは、ちゃんとお母さんに話しておくべきなんだぞ。」
「そ、そんなあ・・・。」
哲司は、やはり肯定できない。
(つづく)