表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
682/958

第8章 命が宿るプレゼント(その21)

「じゃあ、ここに書き込むだけなのか?」

祖父は、そう言って哲司の頭に手を置きに来る。


「・・・・・・。」

哲司は、そうだよとは言いづらかった。



「でもなぁ・・・。」

祖父は、哲司の頭に置いた手を少し左右に動かしながら言ってくる。


「ん?」

哲司はてっきり「そんなことだから忘れるんだ」と言われるのを覚悟していたから、祖父の口元をじっと見る。


「子供の頭は、いろんなことですぐに一杯になるんだ。

そのことは、哲司にも分かるだろ?」

「う、うん・・・。」


「宿題の事を一旦は覚えても、その後からも、いろんな覚えなきゃいけないことが山ほどに入ってくる。

そうだろ?」

「う、うん・・・。」


「そうするとだ、最初の頃に覚えた宿題の事が、随分と下のほうに追いやられてしまうんだな。」

「・・・・・・。」

そうなのかもしれないと哲司は思った。

それでも、それは言葉にはならない。


「でもな、それは、何も、子供に限った事じゃあないんだ。」

「ん? 大人もってこと?」

「ああ・・・、そうだ。

ただな、大人は、忘れちゃあいけないことと、忘れても良いこととをちゃんと区分してるんだ。」

「・・・・・・。」


「例えばだ。哲司、今日、朝飯に何を食った?」

「えっ! 朝ごはん?」

「ああ・・・、そうだ。」

「ご飯。それに、ヤマメってお魚。美味しかった。」

「そっか・・・。じゃあ、昼飯は?」

「う~ん、おにぎり。たくさん食べたよ。お腹一杯に・・・。」

「うん、そうだったなぁ・・・。

だったらな、1週間前の昼飯は?」

祖父は、そう言ったかと思うと、近くの石に腰を下ろしに行った。

中腰になっているのがしんどくなったようだ。


「そ、そんな前のことは・・・。」

哲司は、答えられない。とても思い出せない。


「そうだな。1週間前に何を食べたかなんてことは、重要なことじゃないからな。

爺ちゃんだって、覚えちゃあいない。」

「う、うん・・・。」

哲司はそう同調したものの、祖父の話がこれで終わるとはとても思えなかった。



(つづく)





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ