第8章 命が宿るプレゼント(その20)
「・・・・・・。」
哲司は、「たまに」と言ったことを後悔した。
正直に言えば、「たまに」ではなくって「しばしば」だったからだ。
それでいて、祖父がそうした実態を知っていそうな気がしたからでもある。
知っていたから笑ったような気がした。
「たまじゃないかも・・・。」
哲司は、意識して自分からそう訂正を申し出た。
「おおっ! そ、そうか・・・。なるほどなぁ・・・。」
祖父は、そう言ったっきり、それ以上の突っ込みはしてこなかった。
「じゃあ、どうしたら、その宿題を忘れないように出来るんだろうな?」
祖父は、今度は哲司の前に回ってきて言う。
「う~ん・・・。」
哲司は答えられない。
家でも学校でも、「どうして忘れるのよ?」と何度も問われた。
「それが分かっておれば、忘れたりはしてないか?」
祖父は自分で問うておきながら、自分で助け舟を出してくれる。
「う、うん・・・。」
「問題は、そこなんだろうな。」
「ん?」
「哲司は、宿題を意識して忘れようとは思ってないんだろ?」
「う、うん・・・、もちろんだよ。」
「それなのにだ、現実的には、忘れる事がある。」
「う、うん・・・。」
「じゃあな、その宿題は、どういう風に出されるんだ?」
「どういう風って?」
哲司は、問われた意味がよく分からない。
「小学校なんだから、先生はひとりだけだろ?」
「う、うん。」
「だったら、今日の宿題はこれとこれですよと、終わりの授業のときに言うとか?」
「ち、ちがうんだ・・・。それぞれの授業の時に言うんだ。
まるで、思いついたみたいに・・・。」
「ほほう・・・、思い付きのようにか?」
「うん。国語の授業のときには、今日教えた漢字5つを30回ずつ書いて来いとか・・・。」
「あははは・・・、そ、そうなのか・・・。」
祖父は、どうしてか頷きながら言ってくる。
「だったら、そうして宿題を言われたときには、哲司はどうしているんだ?」
「どうって?」
「忘れないように、ノートにその宿題のことを書いておくとか・・・。」
「う~ん・・・、書いてない。」
「な、なるほどなぁ・・・。」
祖父は、何かを納得するかのように頷いて見せた。
(つづく)