第2章 奈菜と出会ったコンビニ(その26)
「そういう状況だったと言うことは理解できるとしても、そのことと、僕のことを調べられたということがどうしても繋がらないんですが・・・。
まさか、そういうことをしたのが、この僕ではないかと思われた?」
哲司は、話を原点に戻そうとする。
「いえ、決してそのようなことではないんです。
ただ・・・・・」
「ただ?」
「先ほども言いましたように、あの子はそうした行為が自分にされたのかどうかも記憶に無かったものですから、自分の身体に変調を感じたとき、身近な人として叔母のところへ相談に行ったんです。」
「はい。」
「叔母は、まず聞いたそうです。
“好きな人はいるの?”と。」
「はい。」
「その時に、“てっちゃん”という名前が出たのだそうです。」
「・・・・・・・」
「どこで知り合った人なの?と聞くと、バイトをしているコンビニで知り合ったと言うんです。」
「でも・・・・」
哲司は、そこで明らかな違和感を感じる。
その時点で、奈菜がそのような言い方をするとはとても思えなかったのだ。
そんな親密な関係にはなっていないとの確信があった。
「おっしゃる事は分ります。そんな関係じゃないと。
それは分っているんです。でも、その時にはあの子の言葉を誰もが信じたんです。」
「それで・・・・、お父さんが僕のことを知らないかと?」
「そうです。話の発端は、そこから来ているのです。」
「バイトをしているコンビニと聞けば、誰もがこいつの店だと思ったのです。
他ではアルバイトをさせてはいませんでしたからね。」
マスターは横にいる店長のことを指差して言う。
「ですが、先ほども言いましたけれど、私にはその“てっちゃん”という名前にも心当たりは無かったですし、第一、あの子とそこまで親しくなっている男性がいるなどとは思っても見ませんでしたから、義兄には、それは何かの間違いだろうと言ったんです。」
今度は店長が自分の立場を説明する。
「そこで、父親が再度、あの子に問い詰めたんです。
そんな男はあのコンビにでは知らないと言っているぞってね。」
また、マスターへ語り手が戻る。
「それからは、いろいろとあったんです。あの親子。
例の火事で母親を亡くしてから、どうも父親との関係がギクシャクしていましてね。
それで、私は、思い切って貴方のことを興信所に頼んで・・・・。
問題の白黒をつけてやりたかったんです。」
マスターは、ここで改めて哲司に頭を下げた。
「そうですか・・・・・・。」
哲司は、自分のことを調べさせたというこの祖父の気持は何となく理解できる。
「で、どうでした?」
哲司は、その調査結果が気になり始めた。
(つづく)