第8章 命が宿るプレゼント(その18)
「爺ちゃんから言わせれば、何も隠す事じゃあないって思うんだが・・・。」
祖父は、少し首を傾げるようにして言う。
「た、だったら・・・、爺ちゃんはチンチンを隠さないの?」
「ああ・・・、そうだな。そんな必要もないし・・・。」
「・・・・・・。」
「良いか? 恥ずかしいと思うのは、自分に引け目があるからだ。」
「ヒケメ?」
「そう、つまりは、自信がないってことだ。」
「自信?」
哲司には、自信の有無とチンチンを隠すということがどうにも繋がらない。
「そうだ。自分自身が正々堂々としていられるのであれば、例えどんな事でも隠し立てする必要もなかろう?
まして、風呂は誰もが裸になる場所だ。
そんな風呂に、恥ずかしいからって、海水パンツなんかを穿いて入ったら、それこそ変だろう?」
「そ、それは・・・、そうだろうけど・・・。」
「これは、そうした風呂でのことに限った話じゃなくってな・・・。
自分のどこかを隠すようになったら駄目なんだぞ。
哲司も、学校なんかであって出来事は、すべてお父さんやお母さんに話しているか?」
「・・・・・・。」
哲司は答えられない。
「な、何だ! やっぱり、そうだったか・・・。」
「や、やっぱり・・・って?」
「どうも、そんな気がしただけだ。」
「ど、どうして?」
「哲司の様子を見てれば分かるもんだ。」
「・・・・・・。」
「昨日まではお母さんが傍にいたろう?」
「う、うん・・・。」
「その時の哲司と、今日の哲司は明らかに違う。」
「ど、どこが?」
「お母さんがいたときには、何をするにもお母さんの顔色を見ていた。」
「そ、そんなつもりはないんだけど・・・。」
哲司は、ある意味で抵抗をする。
「そうか? だったら良いんだけれどな・・・。
ただな、爺ちゃんのところに来るのも、何年か振りだったろ?」
「う、うん・・・。」
「その間に、哲司も大きくなってきている。
でもな、どことなく、爺ちゃんが知っている昔の哲司とは違っているように思えたんだ。」
「・・・・・・。」
「だから、しばらく泊まって行くか?っていう話をしたんだ。」
祖父は、そう言いながらも、また哲司の背中を流してくれる。
その手が何とも優しげに感じる哲司だった。
(つづく)