第8章 命が宿るプレゼント(その13)
「この汗を舐めると塩っからいだろ?
身体から、それだけ塩分が出ているってことだ。」
祖父はそう説明をする。
「だ、だからなの?」
「ああ・・・、汗をかいたら、水分と塩分は補充しなくっちゃ・・・。
だから、こうして食塩をふって飲むんだ。」
「そ、そうなんだ・・・。」
哲司はそう言って残りの麦茶を飲み欲した。
祖父の言葉の影響なのか、飲み干すと力が沸いてたような気がする。
「じゃあ、三時のおやつにしてやっても良いんだが・・・。」
祖父が言う。
「お、おやつ!?」
哲司がにっこりする。
アイスクリームが頭に浮かんだ。
「その前にだ、行水をしろ。」
「ギョウズイって?」
哲司は行水を知らない。
「ん? 行水も知らんのか?」
「う、うん・・・。」
哲司は肯定する。
これが、学校や家だと、そうは出来ていないだろうとは思う。
知らないことを馬鹿にされることが多かったからだ。
「そうか、そうか・・・。そりゃあ、そうだわなぁ・・・。」
祖父は、自分でそう言いながら、それを納得させようとしている。
「良いか? 行水ってのはだな・・・。
おお、そんなことを説明しないでも、これからその現物を見せてやる。」
祖父は、一旦は口で説明を仕掛けて、すぐ後からそれを方向転換する。
「じゃあな、風呂場に行って、バスタオルを持って来い。」
「う、うん・・・。」
哲司は、ギョウズイがどういうことなのかを知らないままで、取り敢えずは言われたとおりに風呂場へと行く。
そして、バスタオルを取ってくる。
「これで良い?」
「ああ・・、それ持って付いて来い。」
祖父は、そう言ってからまた裏口から裏庭へと出て行く。
もちろん、哲司も付いて行く。
祖父は、午前中に使った木製のタライのところへと向かう。
そう、哲司が竹を洗ったタライだ。
そして、その傍にしゃがみ込む。
「おお、丁度良い具合になっとる。」
祖父の言葉に、哲司が覗き込むと、そのタライの中には結構な量の水が入っていた。
(つづく)