第8章 命が宿るプレゼント(その11)
「う、うん・・・。分かった・・・。」
哲司は、無理矢理自分にそう言わせる。
もちろん、納得をしてのことではない。
ただ、そう言った祖父の顔には、有無を言わせないだけの迫力のようなものがあったからだ。
「もう少し大きくなったら分かることだ。」
その言葉が、哲司を威圧した。
それでも、哲司は不思議だった。
家や学校でも、今の祖父のように「いずれ分かることだ」で押さえつけられることは何度もあった。
その都度、表面的にはそれに従いつつも、心の奥底では「ふん、そんなもの」という反発心が沸いていた。
それなのにだ。
今の祖父の一言には、本当にもう少し大きくなればその理由が理解できるのだろうという受け止め方をした。
それが自分でも何とも不思議に思えたのだ。
「自転車を片付けてくるから、手を洗って先に上がっていろ。」
家に着いてから、祖父がそう言った。
そして、自転車を押して倉庫のようなところへと向かって行った。
いろんな農機具が入れられたところだ。
そこに自転車も入れてあった。
「うん。」
哲司はそれだけを言って、駆け足で裏庭へと回った。
そこで手を洗ってから、台所へと通じる裏口から中へと入るつもりだった。
井戸水をポンプで汲み上げた簡易水道の蛇口を捻って手を洗う。
これがまた心地良かった。
都会だと、夏場のこの時期、水道の蛇口を捻ると生温かい水が出てくるものだが、この祖父の家ではそうしたことはなかった。
水が気持ち良いほどに冷たいのだ。
祖父に言わせると、「これが井戸水の良さだ」と言う。
だから、スイカなどは、この井戸水を掛け流しにしたタライに入れて置くと、都会では考えられないほどに冷える。
そして、その程よく冷えたスイカがとてつもなく美味いのだった。
手を洗い終わって、裏口から家の中へと入る。
(う~ん・・・。)
哲司は、冷蔵後の前で足が止まった。
今まで殆ど気がつかなかったが、ここに来て、喉の渇きを覚えたのだ。
30分近く歩いてきたのだから、ある意味では当然なのかもしれないが・・・。
それでも、哲司はその冷蔵庫のドアを開けられなかった。
やはり、祖父の許可を得てからだと思ったのだ。
(つづく)