第8章 命が宿るプレゼント(その9)
「今の話なんだが・・・。」
今度は、哲司の後ろから祖父の声がする。
「ん?」
哲司が振り返るようにする。
「ペットの話だ・・・。」
「ああ、うん・・・。」
「ペットは家族となるべきなんだ。」
「家族?」
哲司は、それは少し違うような気がする。
確かに哲司の家では飼ってはいないが、友達の家などでの状況から考えると、「ペットは家族」という言い方に素直に頷けない。
「じゃあな。あの丸子ちゃんは、やっぱりペットか?」
「う~ん・・・。」
哲司の瞼に丸子ちゃんの顔が浮かぶ。
そして、両手には、あの触ったときの柔らかさと温かさが蘇ってくる。
「丸子ちゃんは特別だよ。」
それが哲司の答えだ。
いや、そうとしか言いようがない。
「いいか。ペットって言う言葉は、もともとは英語だ。
日本語では愛玩動物って訳される。」
「アイガン動物って?」
「つまりは、可愛がるための動物ってことだ。」
「可愛がる・・・。」
「その点で、家畜じゃあない。」
「カチク?」
「人間が食べるためや、労働力の補助として飼う動物のことだな。
ニワトリは卵を産んでくれるし、牛や馬は人間の代わりに重たい荷物を運んだり農作業をやったりしてくれる。
そして、最終的には食料にもなる。
最近じゃあ少なくなったが、昔は、この村にもそうした家畜は沢山いたんだ。」
「・・・・・・。」
「丸子ちゃんは、もちろん家畜じゃあないな。
だからと言って、ペットでもない。
爺ちゃんはそう思うんだ。
あの子は、婆ちゃんの家族なんだ。」
「・・・・・・。」
哲司も、そう言われると、それがもっともピッタリ来るような気がしてくる。
「だから、爺ちゃんもそうだが、周囲の人達も、丸子ちゃんのことも懸命に考えてやっているんだ。心配してやるんだ。
分かるだろ?」
「う、うん・・・。」
「だからな、嬉しかったと言ってるんだ。
その丸子ちゃんのために、哲司が明日から握り飯を作って持って行くって言ってくれたことがだ・・・。」
祖父の声が一段と大きくなった。
(つづく)