第8章 命が宿るプレゼント(その8)
「ど、どうして?」
哲司は自分にも答えのないことを訊く。
「う~ん・・・、どうしてなんだろうな?
ひとつは、哲司があの丸子ちゃんの存在を認めたってことだったろうな。」
「ん?」
哲司には祖父の言葉が理解できなかった。
「丸子ちゃん?」
哲司が改めて問う。
「うん。哲司はペットを飼ってないだろう?」
「お母さんが、飼っちゃいけないって言うから・・・。」
「飼えるとしたら、哲司は何が良いんだ?」
「う~ん・・・、分かんない。でも、やっぱり、犬なのかなぁ・・・。」
「どうして飼っちゃいけないって言われるんだ?」
「う~ん、僕が勉強しなくなるから?」
「だったら、今はしっかりと勉強できてるのか?」
「・・・・・・。」
哲司は、内心「しまった!」と思った。
「きっとな、そういうことが理由じゃないんだ。」
「じゃあ、どうしてなの?」
「う~ん、必要がないからだ。」
「必要がない?」
哲司は、ペットを飼うのに、そのペットが必要かそうでないかが考慮される事は無いように思える。
単純に、飼いたいか飼いたくないか、で決まるのじゃないのかと。
「ペットは物じゃない。生き物だ。そうだろ?」
「う、うん・・・。それはそうだけれど・・・。」
哲司は、どうして祖父がそんな分かりきったことを改めて言うのか理解できなかった。
「おう、ようやっとここまで来た。」
祖父が突然のように言う。
「ん?」
哲司が改めて周囲を見渡す。
「この道は分かるだろ?」
祖父が哲司に訊いてくる。
「ああ・・・、この道って、パスが通ってる道?」
「おう、よく分かったな。」
「だ、だって・・・、あそこにバス停がある。」
「あははは・・・・。そうだったな。」
祖父が豪快に笑った。
「だったら、ここからだと、爺ちゃんの家まで行けるか?」
「う、うん。それは行けるよ。」
「じゃあ、案内してくれ。」
「うん、分かった。」
哲司が初めて祖父の前を歩き始める。
(つづく)